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10月25日:リンパ節が腫れる意外な仕組み(10月23日発行Nature掲載論文)

2014年10月25日

局所感染が起こるとその近くのリンパ節が腫れる。外界からの異物に対して免疫系の細胞を動員して速やかに免疫反応を誘導するための仕組みだ。以外と知られていないが、リンパ節はほ乳動物にしか存在しない高等システムだ。京大に在籍していたとき、助教授の横田君(残念だが今年2月に膵臓がんで亡くなった)がId2遺伝子をノックアウトした時、乳腺とリンパ節の両方が消えてしまった。論文を書く段になって、Id2はほ乳動物を決める遺伝子と言うタイトルにしたらと勧めたが、そんな作り話をすると審査員が通してくれないとはねつけられたのを覚えている。これまでリンパ節が腫れたり縮小したりするメカニズムは、ケモカインと呼ばれる免疫細胞をリンパ節へリクルートする分子と、リンパ節の血管や間質に発現する接着因子によって調節されていると考えられて来た。今日紹介する英国がん研究所からの論文はこれに加えて、間質細胞の隙間を拡げたり縮めたりしてリンパ節内の免疫細胞の量が調節されていると言う新しいメカニズムを提案しており、10月23日号のNature誌に発表された。タイトルは「Denderitic cells control fibroblastic reticular network tension and lymph node expansion(樹状細胞が線維芽細胞様細網細胞ネットワークの緊張性を調節しリンパ節腫大をに関わる)」だ。この研究の発端は、免疫細胞のリクルートに関わるCLEC-2受容体とそれに結合するポドプラニンの関係が、受容体・リガンドと言う一方向ではなく、リガンド・受容体でもある双方向関係ではないかと言う可能性に気づいた事だ。これを示すために、普通の線維芽細胞株にポドプラニンを発現させると、細胞が収縮する。よく調べてみると、ポドプラニンからシグナルが確かに入り、エズリン、GEF-H1,RhoA, を介して細胞内の収縮分子アクチンを収縮させる事を突き止めた。さらに、この反応がポドプラニンの受容体と考えて来たCLEC-2により完全に抑制され、結果細胞は伸展する。予想通り、ポドプラニンはシグナル受容体として働き、CLEC-2がリガンドとして働く。次の問題は、このシグナルが実際のリンパ節でも働いているかどうかだ。リンパ節ではCLEC-2は血液系の樹状細胞、ポドプラニンは線維芽細胞系の細網細胞(FRC)に発現している事だけ頭に入れていただいて、他の実験を全て割愛して結論だけ述べる。リンパ節のFRCはポドプラニンを強く発現しており、そのため収縮状態にある。免疫刺激が入ると先ずCLEC-2を発現した樹状細胞が移動して来てポドプラニンに結合し、細胞を伸長させる。これによってFRCが存在する部位の細胞の隙間が拡がり、多くの免疫系細胞が入って来ても収容できると言うシナリオだ。実際樹状細胞のCLEC-2遺伝子を欠損させるとリンパ節の大きさは全般的に小さくなる。論文を読むと、実際には差はそれほど大きくないので、やはりケモカインと接着分子の協調作用が基本的にリンパ節への細胞リクルートの主役だろう。しかし、間質側の形態も細胞のリクルートに寄与できる事を示したこの論文は、新しい見方を示してくれたと言える。おそらく、いわゆる造血系のニッチと呼ばれる細胞についても、同じ様な視点から再検討が行なわれる様な気がする。


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