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11月4日:RNAの自縄自縛をとく(Natureオンライン版掲載論文)

2014年11月4日

今日紹介するスクリプス研究所からの論文はかなりマニアックな話だが、進化が起こる前、即ち物質からどう生命が出来たのかに興味がある人達にはとても面白い話だ。通常情報は機能をになう分子や部品とは別に存在している。生命ではDNAがタンパク質の情報で、タンパク質が生命機能を担っている。ただ、全く性質の異なる情報と機能分子が対応するようになるためには、複雑な過程が必要で、生命発生前の原子生命ではもっと単純な情報と機能分子の関係が存在するのではと想像されていた。そんな時、RNAなら様々な立体構造をとって、酵素活性のある機能分子として働けると言う発見が報告され、RNAなら情報と機能を一つの分子で実現できると世界中沸き立った。ただ問題は、RNAが情報として自分の鋳型になり、自分を複製するための酵素になり得るとしても、新たに出来たRNAが自分自身に結合して2重鎖を作ると立体構造が壊れ酵素機能が消えてしまうという問題があった。DNAが情報としてだけ働けるのはまさにこの2重鎖を作る性質のおかげだが、情報と機能を同時に発揮しようとすると、情報部分が機能を抑制してしまうと言う自縄自縛に陥ってしまう。この問題を解く方法を見つけたのがこの論文で、Natureオンライン版に掲載された。タイトルは「A cross-chiral RNA polymerase ribozyme (異性体を超えて働くRNAポリメラーゼリボザイム)」だ。答えはこのタイトル通りで、自縄自縛を光学異性体を使うことで乗り越えると言うアイデアだ。分子には鏡像をとる異性体が存在し、それぞれL型,D型と名付けている。私たちの身体はL型の分子だけを使っている。これは同じ型の分子同士でないと立体構造上正常機能が発揮できないからだ。逆に言うとL型のRNAはD型のRNAとは2重鎖を作れない。これに注目して、自分とは逆の異性体のRNA合成が出来るL型RNA酵素を膨大なライブラリーから選び出したと言うのがこの仕事のみそだ。この酵素はD型の自分自身のコピーを作れるが、D型であるため自分自身には結合しない。こうして出来たD型のRNA酵素は今度はL型のコピーを作る酵素として働く。そうすると、結局回り回って自分のコピーが完成し、サイクルを一定の確率で回すことが出来る。詳細は割愛するが、試験管内でこの反応が実際に起こることを初めて示したのがこの研究だ。これにより、初めて情報と機能が一つになったRNA酵素により、持続的複製を維持する可能性が示された。これが本当に生命が始まる前のどこかで起こっていたかはわからない。しかし、この酵素を手始めに、スープの中から生命を発生させようとする夢を抱いた研究者も出てくるかもしれない。19世紀、生命の自然発生を否定したのはパッスールだ。しかし、ではどうして生命が存在しているのか?この自縄自縛もこの研究から解けることを願っている。

 


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