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11月9日:遺伝的体質が腸内細菌叢の組成に影響する:双生児を用いた研究(11月6日号Cell掲載論文)

2014年11月9日

腸内細菌叢の研究分野が急速に進展しているのを最近つくづく感じる。このホームページでも、多くの研究を紹介してきた。だだこの論文を読むまで、腸内細菌叢に私たち自身の遺伝的体質が大きな影響を及ぼす可能性は考えたこともなかった。なぜなら、これまでの研究で腸内細菌叢は生活環境に影響されることがわかっているし、その構成もちょっとしたきっかけで変化しやすい。また昨年の9月9日紹介した論文では、同じ家族で育った一卵性双生児の中に片方が肥満、片方は正常という稀な組み合わせを探し出して、遺伝的に同じホストからの細菌叢も大きく構成が変化しており、肥満防止効果も全く違っていることを示していた。今日紹介するコーネル大学からの論文も双生児を用いた研究だが、一卵性と、2卵性の双生児、及び双生児以外の間で腸内細菌叢を調べることにより、遺伝的体質が腸内細菌叢の構成に大きな役割を果たしていることを示す研究だ。タイトルは「Human Genetics shape the gut microbiome(ヒトの遺伝体質が腸内細菌叢の構成を方向付ける)」で、11月6日号のCellに掲載された。研究ではまず、一卵性双生児171ペア、2卵生双生児245ペア、98人のコントロールペアの便を経時的に集め、腸内細菌叢の細菌構成を調べて、ペア同士で比較して類似性を計算している。結果は、血縁がないペアより双生児ペア、2卵生双生児ペアより、1卵生双生児ペアの細菌叢構成が類似している。もちろん類似しているのはペア同士間の話で、双生児だから特定のパターンになるわけではない。また、対象は23歳から86歳までのペアで、調べたほとんどのペアは別々に生活している。したがって、この類似性は遺伝的体質を反映している可能性が高い。遺伝的体質がすべての細菌に影響するとは考えにくいので、大きく影響される特定の細菌種があるはずだと狙いを定め、最終的にChristensenellaceaeと呼ばれる最近特定されたばかりの細菌種がもっとも遺伝的体質に影響されることを突き止めた。この細菌は短鎖脂肪酸を合成して、その結果体重上昇を防ぐことで現在注目されている。確かにこの細菌種が多いホストペアは、おそらく短鎖脂肪酸の合成によるのだろう、痩せる傾向がある。事実、この実験でもこの細菌種を多く含む細菌叢を腸内移植すると、無菌マウスの肥満を防止できる。最後に、Christensenellaceaeを含まない、移植により肥満を誘導する便にChristensenellacaeを加えると、マウスが痩せるようになるという驚くべき結果を示している。この結果から得られるシナリオは、1)遺伝体質はChristensenellaceaeの比率を決める、2)この細菌の比率により腸内細菌叢全体の構成が影響される、3)この細菌はおそらく短鎖脂肪酸の合成を通して肥満を防ぐ、ということになる。とすると、これまで体質と相関するとしてきた肥満の中には、直接脂肪代謝と関わるのではなく、細菌叢を変化させることによる間接効果も存在することになる。残念ながらこの研究ではChristensenellacaeの比率と相関する遺伝体質の特定には至っていない。ただ、後からChristensenellacaeを加えても肥満が抑えられるなら、この細菌をカプセルに入れたり、あるいはヨーグルトに入れて肥満を防ぐ日が来るかもしれない。


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