AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 11月10日:腸内細菌叢と種の進化の同調(アメリカアカデミー紀要オンライン版掲載論文)

11月10日:腸内細菌叢と種の進化の同調(アメリカアカデミー紀要オンライン版掲載論文)

2014年11月10日

便の話が続いて申し訳ないと思うが、まさに腸内細菌叢分野は百花繚乱の相を示していて、多くの研究者が自由な発想で便と取り組んでいるのを見ると、どうしても紹介したくなる。今日は、人類の進化と腸内細菌叢の変化が相関するかどうか調べたテキサス大学からの研究で、アメリカアカデミー紀要オンライン版に掲載された。タイトルは「Rapid changes in the gut microbiome during human evokution(人類進化過程で起こった腸内細菌叢の急速な変化)」だ。要するに、現存の人類、チンパンジー、ボノボ、ゴリラの腸内細菌叢を比べただけの仕事と言えるが、やってみようと思ったところが恐れ入る。もちろん動物園から便を調達するといった安直な研究ではない。チンパンジーとボノボの便はコンゴで、ゴリラの便はカメルーンで採取している。さらに人類代表として、アメリカ合衆国市民とともに、アフリカ・マラウィ共和国の田舎の住人(といっても想像はつかないが)、ベネゼラ熱帯林の原住民、ヨーロッパの都市住人、そしてアフリカ・タンザニアの狩猟民族から、それぞれ30−300人ずつの便を集めている。ともかくこの執念には感心する。結論から言うと、それぞれの腸内細菌叢を構成する細菌の種類は人からゴリラまで基本的には保存されている。違うのは、その構成比で、動物脂肪の多い食事をとると増えてくるBacterioidesが5倍以上になる。一方、食物繊維を処理する古細菌の種類は大きく減少する。詳細は割愛するが、同じように類人猿も、まずゴリラとボノボ・チンパンジーに分かれ、その後チンパンジーとボノボが分岐する系統樹を、腸内細菌からも書くことができる。この変化は全て食性の変化と片付けられてきたが、このような変化をプロットしてみると、実際にはゲノム系統樹から計算できる時間とよく相関している。ただ、人間の間の多様性は猿と比べると大きくなり始めており、これまでとは違うルールで多様化し始めているようだ。特に一人一人の個人の腸内細菌叢の種類を数えてみると、野生の類人猿の平均が85種類なのに対して、ベネゼラ熱帯雨林では70、マラウィの田舎では60、そしてアメリカ人では55というように、共存するバクテリアの数が低下の一途を辿っているようだ。話はこれだけだが、環境より進化の時間に細菌叢の構成が相関しているというのは驚きだ。しかし人間の腸内細菌叢はどうなっていくのだろう。これから様々な操作が行われるだろう。その結果が個人の腸内細菌叢の多様性を増大させる方向に行くのか、あるいは更に減る方向に進むのだろうか。ひょっとしたらゼロになった時がウンの尽きかもしれない。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*