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11月23日:DNA複製から見える統一場の理論(11月20日号Nature掲載論文)

2014年11月23日

昨日はゲノム全体に分布する遺伝子組み換えのホットスポットの出来方を研究した論文を紹介した。今日は、DNA複製の開始点を制御している核内マトリックスについて研究したフロリダ大学からの論文を紹介する。タイトルは、「Topologically associating domains are stable units of replication-timing regulation (局所構造的に集まっている領域は複製開始調節の安定的単位になっている)」で、11月20日号のNature誌に掲載された。ヒトの細胞は分裂するたびに30億塩基対もある大きなゲノムをほぼ正確に複製する。これだけ大きいともちろん一本の染色体を端から端に複製していたのでは時間がかかりすぎる。実際には500Kb程度の領域に分けて同時に複製する。それぞれの領域では開始点では早くDNAが複製し、時間とともに終点へ向けて複製が進む。次世代シークエンサーや、細胞周期解析法の進展のおかげで、ゲノム全体の複製単位を開始点から終点まで決定することが可能になり、細胞の種類に応じてこの単位が変化することもわかってきた。これを可能にした方法だが、複製時DNAに取り込まれるBrDUという分子に対する抗体を使って遺伝子断片を精製し次世代シークエンサーで配列を決めることで、特定の時点でDNA合成が進んでいる場所を決めることができる。また、複製が開始したばかりの細胞から、複製を終えようとしている細胞まで、複製の異なる段階にある細胞を集めることも可能になっている。この二つの技術を組み合わせると、各領域での複製の開始点、終了点を決めて各複製単位の境界を特定することができる。すなわち、複製単位でゲノムを領域わけすることができる。もうひとつ最近可能になったゲノムの分け方は、核内のマトリックスとによりDNAがひとまとめにされていることを利用する分け方で、局所的に集まっているDNA領域を一つの単位として特定するHi-Cと呼ばれる方法を用いて行う。この局所にまとまったDNAの内の特殊なケースに、核の表面に集まったLamina associating domain(LAD)がある。前置きが長くなったが、複製単位と、核内での幾何的位置との関係を調べたのがこの研究で、結論は明快だ。すなわち、両方の方法で分類したゲノム単位がほぼ1対1の相関関係を持っているという結果だ。特に重要なのが、細胞が変わると複製単位も変化するが、この変化に呼応して複製単位の幾何学的局在が変化することだ。この原因を探っていくと、複製開始領域が、転写に直接関わる分子が結合している部分と重なることがわかり、核内での各領域の幾何的位置を調節することにより、細胞特異的な転写を複製が邪魔しないよう調整が行われている構図が浮き上がる。まとめると、それぞれの複製単位の核内の位置は、細胞種に応じて個別に調節されており、これにより転写や複製の開始が起こりやすい場所決め(実際には核の内側にある)が行われることで、細胞の性質を損なうことなく複製を繰り返すことが可能になっているという結論だ。今日も一般の方にはわかりにくい話だったと思うが、人間のゲノムのような大きな情報は、複製から転写まで全ての過程を統合しないとうまく利用できないことを示す納得の研究だと思う。しかしENCODEプロジェクトが急速に進展していることを実感するが、我が国から理研しか参加しないというのも問題だ。ゲノムプロジェクトに対する我が国の取り組みを根本的に改める時が来ていると思う。


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