AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 12月3日:腎臓繊維化の原因(Nature Medicineオンライン版掲載論文)

12月3日:腎臓繊維化の原因(Nature Medicineオンライン版掲載論文)

2014年12月3日

肝炎でも、腎炎でも、慢性炎症治療の重要な目標は一旦起こると戻ることができない繊維化を防ぐことだ。しかし、現在も炎症自体を抑える以外、繊維化を防ぐ明確な治療法はない。このため、繊維化自体のメカニズムの解明が待たれている。今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は腎臓の繊維化に関わると思われる少し意外なメカニズムを示した研究でNature Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「Defective fatty acid oxidation in renal tubular epithelial cells has a key role in kidney fibrosis development (腎尿細管での脂肪酸化の異常が腎繊維化の鍵になる)」だ。この研究でもまず繊維化のメカニズムを探るべく、慢性腎炎(CDK)患者さん95人から得られた腎組織の遺伝子発現を正常と比べている。もちろん炎症に伴い上昇する遺伝子が多くリストされてくるが、それと同時にいわゆる脂肪を燃やす酵素群の発現が低下していることに気づいた。同じ現象がマウスの実験モデルでも見られることを確認した後、モデル実験系で脂肪代謝と腎繊維化の関連を調べる実験へと進んでいる。脂肪肝と同じで、腎炎でも尿細管上皮細胞に脂肪が蓄積することが知られている。この研究でも、腎尿細管は体の細胞の中でももっとも脂肪代謝が高く、エネルギーを脂肪酸化によって得ていることを確認した。そこでまず、腎尿細管に脂肪が蓄積するようにした遺伝子改変マウスを調べたところ、脂肪が蓄積するだけでは腎繊維化は起こらない。腎尿細管が繊維化の起点になるのではというアイデアを検証するため、尿細管細胞株に繊維化を強く誘導するTGFβ1で刺激すると、やはり脂肪酸化システムが抑制され、その結果細胞死に至ることを発見する。すなわち、腎炎組織で分泌されるTGFβ1が直接細尿管細胞に働いて、脂肪代謝を抑制する。普通の細胞なら他の回路でエネルギーを調達できるが、尿細管のエネルギーは脂肪に依存しており、その結果細胞死が始まり、繊維化に移行するというシナリオだ。では脂肪代謝を改善すれば繊維化を防ぐことができるか?。尿細管に様々な脂肪代謝に関わる酵素を発現させると、確かに繊維化が遅れる。そこでコレステロールを下げることが知られている脂肪代謝改善剤フェノビブラートや試験的な薬剤C75を投与したところ、尿細管の細胞死が抑制できることを見出している。私自身これまで繊維化を脂肪代謝と関連させて考えることはなかったので、興味深く読んだ。特に、すでに脂肪代謝改善に使われている薬剤が人の繊維化進行を抑制するなら重要な発見だと思う。ただ、モデルマウスのように腎尿細管特異的に脂肪代謝を改善させることは困難だ。このアイデアが本当に慢性腎炎患者さんの朗報になるのか、あるいは実験モデルだけの話か、期待を持ってもう少し様子を見たい。


  1. 橋爪良信 より:

    ドラッグリポジショニングの課題になりそうですね。TGFβ阻害剤が線維化を抑制するのでコンボも可能性があるかもしれません。

    1. nishikawa より:

      橋爪さんのような強い専門家が考えていただけると腎炎の方も助かると思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*