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12月26日:タッチスクリーン操作による脳変化(1月5日発行Current Biology掲載論文)

2014年12月26日

昨日はiPadを取り上げたので、今日はスマフォを取り上げる。iPhoneが出たばかりの頃、これは日本で普及しないのではと思った。というのも、当時の若い世代が片手でしかもブラインドで、携帯電話の小さなキーボードをあやつり、高速で文字を入力している姿を目の当たりにすると、少なくとも我が国の次世代は、この入力スタイルから離れられないのではと想像したからだ。しかしこれは私の取り越し苦労だった。もはや電車の中で見る高校生の多くには同じ文字入力文化を見ることはできない。今やスピードの差こそあるものの、電車に乗ると周りの半分以上がスマートフォン片手に何かに熱中する姿を見ることができる。今日紹介するスイス・チューリッヒ工科大学からの論文は、この新しい文化が私たちの脳をどう変えているのか検証した研究だ。タイトルは「Use-dependent cortical processing from fingertip in touchscreen phone user(スマートフォンのヘビーユーザーにみられる指先に対応する脳変化)」だ。おそらくこの論文の著者は、タッチスクリーンを親指で熱心に操作するスマフォのユーザーを見て、弦楽器奏者の指の早い動きを想像したのだろう。これまで弦楽器奏者で調べられていた指の訓練による脳皮質の再構成が、スマフォユーザーにも見られるのではと思いついた。そこで、スマフォ利用者37名、携帯電話11名に頼んで脳波図検査を受けてもらい、それぞれの指に2msの刺激を与え、脳の反応を調べている。実験は極めて単純だ。それぞれの被験者には前もって、検査前10日間どの程度のスマフォを使っていたのか申告してもらう。検査前にはスマフォのログからそれ以前の100時間どれだけ頻繁に使っていたのか、最後にスマフォを使っていた時から検査までに経過した時間などを調査し、脳変化との相関を調べている。さて結果だが、予想通り、スマフォを使っていると親指だけでなく、人差し指、中指まで、刺激に対して敏感になっている。ただ、この反応性は何年スマフォを使っていたかより、検査前100時間にスマフォを使っていたかと相関し、検査前最後に使った時からの時間に逆相関することがわかった。また、2本の指に刺激を加えて反応性の鈍化を見る方法で、スマフォユーザーでは親指と人差し指の統合性が高いことも示している。いずれにせよこの研究からの結論は、直近の使い方で指刺激に対する脳の反応性が決まるということで、まだ完全に脳がスマフォ親指に合わせて再構成しているわけではないという結果だ。使い始めてからの長さに相関しないというのは意外だが、スマフォが普及して短いことを考えると、弦楽器奏者のように本当の訓練で脳回路を変化させているのとは全く違うようだ。しかし、今後何年も経って、スマフォ入力チャンピオンなどが出て来れば、この実験もまた違う結果が出るような気がする。いずれにせよ、思いついたことはやって見て論文にするという熱意には感心する。


  1. 浅川茂樹 より:

    いろんな研究がなされていて、それが論文となっていることに驚きます。

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