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8月22日朝日新聞(大岩):糖尿病患者の認知症リスク予測

2013年8月22日

朝日新聞は記事のペーストを許可していません。必要な方は
http://www.asahi.com/tech_science/update/0820/TKY201308200025.html を参照してください。

   今日の朝日の記事は、糖尿病の患者さんが認知症になるリスクを簡単に評価出来る基準を提案する論文について紹介している。論文はLancet Diabetes and Endocrinologyに掲載されているが、まだ私はオリジナルな論文にアクセスできていない。
  患者さんの立場から見た時、役に立つ情報であれば、日本発であろうとなかろうとどちらでもいい。大岩さんは患者さんに役に立つ情報を世界にまで守備範囲を広げて探し出し、レポートした。この点を高く評価したい。特に、リスク度を判定するチェックリストを理解しやすい形で提示している点がすばらしい。実際医師でなくとも、自分のリスクをこの表で調べる事が出来る。これまで紹介して来たSciencenewslineもこのLancet Diabetes and Endocrinologyに掲載された論文について紹介しているが(残念ながら英語版だけ)、このチェックリストは示されていない。論文の内容をしっかり消化して記事にする、当たり前の事が当たり前にできている記事だと感じた。とは言え、私自身はこの論文にアクセスが出来なかったため、オリジナルな論文と比べる事が出来ていない事は断っておく。
   朝日の記事とSciencenewslineの記事を比べて一つ気になったのが、カイザーパーマネント研究所と言う記載だ。SciencenewslineではKaiserPermanent Division of Researchとなっていた。いずれにせよ聞いた事がなかったので、Sciencenewslineの脚注にあったこの組織の概要を覗いて驚いた。この概要は、「カイザーパーマネントはヘルスケアの未来のために、アメリカトップのヘルスケアと非営利の健康増進計画を提供する組織で、900万の会員を擁している。実際には会員と医師や様々な医療スタッフをつなぎ、会員が最適の健康管理と医療を受けられるよう活動している組織」と要約出来る。すなわち毎日の健康管理から医療まで会員に提供する目的で1945年に創立された組織で、現在では研究所を持っており、これが今回論文を発表したDivision of Researchだ。ホームページを見て更に驚いたのは、この組織に17000人の医師が組織化されており、患者さんと繋がっている点だ。このような組織だと多分コホート研究など長期的視野の必要な研究も、ずいぶん楽に進むことだろう。またこの組織は将来の医療についてのはっきりとしたアジェンダを持っている。このことが今回のような明確な研究につながったのだろう。Sciencenewslineでも複雑な診察や検査なしに、病歴からだけこのリスクスコアが得られることの重要性が強調されていた。
   ひるがえって我が国を見渡すと、「これからコホート研究が重要で予算化が必要」と叫ばれている。もちろんヒトゲノムなど様々な進展があってのことだろうが、提案されている研究自体は従来と同じ手法のトップダウン型のコホート研究だ。すなわち科学的にコホート研究を始めることだけが意図されており、10年、20年という将来の展望がほとんど皆無だ。本当に長期的視野で考えるなら、患者さん、かかりつけ医、研究者の関係を再構築していく、ボトムアップの方向性が今こそ求められているのではないだろうか。少し望みすぎかもしれないが、記事でも研究だけではなく、それを行ったカイザーパーマネントについても紹介をしてほしかったなと思った。


  1. 長瀬 より:

    どなたかコメントされたのではないかと思いますが、カイザーパーマネントは、米国の民間医療保険会社ですね。保険の加入者が900万人、契約している医師が1万7000人ということですね。契約医師はカイザーに加入している患者だけを診てるのだと思います。
    「医療費を抑えるために、よい薬があっても高額の薬だと使わせず、安価な薬を使わせる」などと日本からの批判的な見方もあるようですが・・・・・

    1. nishikawa より:

      存じております。公的保険のないアメリカの一つのモデルで、現在様々な訴訟を抱えているのも聞いています。事実日本でも国家公務員共済、逓信病院などよく似たモデルがあった事も確かですが、公的保険を通した平等性維持し、診療機関選択の自由のある日本では根付かなかった様です。しかし、この機関が行っているコホート調査には学ぶ所も多いと思っています。現在我が国では研究者が公的資金でコホート研究をやるべきだと要求している様です。ただ、項にだけ頼らず、自由な発想で民間から長期的コホートをコストを欠けずに進める方策も考えていく必要があると思います。

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