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2月19日:幽霊の正体見たり枯れ尾花(Nature オンライン掲載論文)

2015年2月19日
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手品の中には、タネが明かされても、タネ自体の創造性に感嘆するものもあるが、多くはネタが明かされると「なんだ、それだけのことか」で終わることが多い。論文もそうで、最初「なんだろう」とひきつけられ、興味を抱いたまま読み進んでも、読み終わると「なんだ、これだけのことか」で終わることも多い。今日紹介するワシントン大学からの論文はこの典型で、それでもNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Vertically transmited faceal IgA levels determine extra-chromosomal phenotypic variation (子孫に伝達できる便のIgAレベルは染色体外に起因する形質変異を決める)」だ。まずこの研究は、動物施設のマウスを、便の中のIgAレベルで2種類に分けられることを示す。しかも、ケージ内でこの性質は、新しく生まれた子孫に伝わる。ただ、マウスの遺伝型とは相関しないので、流行りの腸内細菌叢のせいかと当たりをつけ、IgAレベルの低い便を移植すると、ホストの便中IgAは低い。逆に高い便の移植では高いままだ。次に、細菌叢が便中のIgAレベルを決めるメカニズムを探ると、結局細菌の中にIgAが腸管内に分泌される分子を分解するものがあることを突き止める。IgAはこの分子によって複合体を形成しているので、この分子がなくなるとIgAは他の細菌性のタンパク分解にさらされ、結果便中のIgAが低くなるというシナリオだ。もちろんこの細菌がSuttelaと呼ばれる嫌気性菌の仲間が怪しいというところまでは辿り着いている。また、これが原因でIgAが低い場合、腸がデキストラン硫酸ナトリウムの障害を受けやすいため、病理的に重要なマーカーになることを示唆している。ただ、読む側としてはずっと引き伸ばされて、枯れ尾花が正体でしたと言われた気分だ。せめて、IgA分泌蛋白を分解する酵素ぐらいは突き止めて欲しいと思う。もちろん蓼食う虫も好き好き。

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