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3月15日:樹状細胞療法の新しいプロトコル(Nature オンライン版掲載論文)

2015年3月15日

ガンに対する免疫機能を高める樹状細胞療法は、健康保険の適用はないものの、普及している免疫治療と言える。様々な方法があるが、一般的には自己血から樹状細胞を調整し、ガン抗原を様々な方法でパルスし、患者さんに戻して免疫反応を誘導するというプロトコルが使われている。残念ながら我が国でこの治療法を提供する機関は、患者さん向けのサイトに全く治療成績を表示していない。従ってその効果についてははっきりしないが、科学的治験を行った論文からは一定の延命効果があることは明らかだ。今日紹介する論文を発表したデューク大学脳腫瘍センターのグループも、最も悪性のグリオブラストーマの治療として樹状細胞療法を積極的に取り入れており、その過程で見つかった新しい方法が治療成績を大きく改善することを発見し、Natureオンライン版に発表した。タイトルは、「Tetanus toxoid and CCL3 improve dendritic cell vaccines in mice and glioblastoma patients (破傷風トキソイドとCCL3はマウスモデルやヒトグリオブラストーマに対する樹状細胞ワクチンの効果を促進する)」だ。この論文は基礎研究から臨床研究へと進む通常の方向の逆で、臨床で効果が見られたプロトコルの科学的メカニズムを動物モデルを使って調べた研究だ。まずこの新しいプロトコルの効果を無作為化した12人について比べている。プロトコルだが、患者さんは全て樹状細胞ワクチンを受けるが、このグループはガン自身の抗原の代わりに、グリオブラストーマの多くが発現しているサイトメガロビールスp65分子のRNAを樹状細胞に導入して、ガンへのキラー活性を誘導している。さて、普通の方法で樹状細胞ワクチンを投与しても、6例全員が30ヶ月以内、ほとんどは1年で死亡している。しかし、樹状細胞ワクチンを投与する21日前に破傷風トキソイド・ジフテリアトキソイド混合剤を注射、その後ワクチン投与時に破傷風トキソイドを打つプロトコルだと、なんと半数が40ヶ月を超えて生存している。研究では主にマウスモデルを使って、この破傷風トキソイド前処理がなぜこれほど効くのか、そのメカニズムを探っている。詳細を省いて結論だけを言うと、破傷風トキソイドを2回注射することで、活性化CD4T細胞が誘導され、局所の炎症だけでなく、全身のリンパ節でケモカインが産生されることで、注射した樹状細胞ワクチンの局所リンパ節への移動が促進され、最終的にガンに対するキラーT細胞効率よく誘導できるという結果だ。この移動に、CCL3ケモカインが関わること、またリンパ節でCCL21ケモカインの発現が上がることもこの反応に関わることを示している。臨床結果が先にあって、そのメカニズムを後からモデル動物で明らかにし、安心して臨床研究をさらに進めるという典型的研究だと思う。いずれにせよ、これまで、試行錯誤的に行われてきた様々な免疫治療が、一歩づつ予測可能な治療へと変化しつつあることを実感させる研究だ。もちろん樹状細胞ワクチンをPD1,PDL1,CTLA4抗体などと組み合わせることも可能だ。免疫治療はどこまでガンに勝利するのか、期待が膨らむ。


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