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3月28日:蛋白翻訳を見えるようにする(3月20日号Science掲載論文)

2015年3月28日

遺伝子の情報がタンパク質へと変換するとき、まずmRNAへの転写が起こり、これがリボゾーム上でペプチドへと翻訳されるというセントラルドグマは、高校でもしっかり習う分子生物学の中核だ。教科書にも、核内で転写されたmRNAが核外に出てリボゾームと出会い、リボゾームの上でタンパク質に翻訳される図が載っている。しかしこの絵の通り、特定のmRNAが転写され、移動し、ペプチド合成の鋳型として使われていることを生きた細胞で追いかけることは難しい。というのも核酸自体は情報であっても、それ自身で蛍光を発したりすることがないからだ。ただ特定の核酸構造に結合するペプチドを用いて特定の核酸を追跡する技術が続々開発されている。今日紹介するスイス ミーシャー研究所と、アメリカ アインシュタイン大学の共著論文は、まさにセントラルドグマを視覚化することにチャレンジした研究で、3月20日号のScienceに掲載された。タイトルは「An RNA biosensor for imaging the first round of translation from single cells to living animals (生細胞や動物の最初の翻訳を調べるためのRNAセンサー)」だ。このグループが開発したRNA追跡システムはファージウイルスから借りてきた4つのコンポーネントからできている。まず追跡する遺伝子の翻訳される部分に、蛋白の機能には関係ないがタンパク質に翻訳されるPP7と呼ばれる配列と、翻訳されない後ろの部分にMS2配列を挿入する。この挿入したRNA部分に結合するPCPとMCP蛋白にそれぞれ緑と赤の蛍光分子を結合させた蛋白を核内で発現させるベクターシステムだ。すなわち、このmRNAが転写されるとPP7,MS2に緑と赤の蛍光物質が結合してマークする。これにより特定のmRNAだけが光るようになる。このmRNAがリボゾームと出会って、翻訳が始まるとPP7は翻訳されるためヘアピン構造を取れなくなり、結果緑の蛍光物質だけが外れる。すなわち転写されたては、一個のmRNAは緑と赤が合わさって黄色く光るが、翻訳が始まると緑の蛋白が外れて赤だけが残るという設計だ。論文ではこの設計で、mRNAを追跡できることをビデオで示している。私に取っても初めてセントラルドグマを目にした実感がある。また、タンパク質の翻訳を阻害すると、黄色から赤への変化は見られない。この追跡によって、当たり前かもしれないが、ほとんどのmRNAは核外に移行した後翻訳が始まること、また継時的拡散により核から離れ、そこでリボゾームと出会うことも示している。詳しく述べないが、最後にこの技術が様々な分野に実際役立つことを示す目的で、一つは細胞ストレス反応として起こってくる翻訳の停止プロセス、そしてショウジョウバエの卵形成のOskar分子mRNAの翻訳の調節がモニタリングできることを示している。こんなこととっくにわかっているという人もいるかもしれない。しかし、見ることは信じることにつながる。遺伝子組換え技術や蛍光タンパクが利用できるようになってから始まった、細胞の中の分子動態を見るための挑戦は当分終わることはなさそうだ。


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