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4月29日:子供の命を救った7つの成果(アメリカ小児科協会発行パンフレット)

2015年4月29日

捏造問題について講演をよく頼まれるが、その際、倫理とコンプライアンスを強調する思考停止で終わるのではなく、必ず具体的な提言で終わるようにしている。その一つ、政府が明日からでもできる事として提言するのが、業績として新聞記事の添付を求めることを中止することだ。研究に税金を使っているなら一般の方へその成果を示すのは当然のことだが、それを新聞記事に代えてしまうことは、百害あって一利もない。その理由については長い話になるので別の機会にするが、市民への情報提供にはもっと様々な方法があるはずだ。そんな例をAmerican Academy of Pediatrics (米国小児科協会)が最近発表したレポートに見ることができる(https://www.aap.org/en-us/advocacy-and-policy/aap-health-initiatives/7-great-achievements/Pages/default.aspx)。このレポートは、小児科領域の研究に対する長期的支援の重要性を訴えるため小児科協会が作成したもので、タイトルは「7 great achievements in pediatric research in the last 40 years (過去40年に小児科領域の研究が成し遂げた7つの大きな成果)」だ。これを読めば、一般の人だけでなく、臨床に当たる医師も、小児科研究について新しいイメージを得ることができるよう作られている。さて7つの成果とは何か?

  • 1970年代半ばから始まった様々なワクチン開発のための研究。特に子供に関わるワクチンとしてロタウイルスワクチンやインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではない。)に対するワクチンを例示し、安価に多くの子供の命を守っていることを示している。
  • 乳幼児の就寝時に襲う突然死が、仰向けに寝させることで防ぐことができることの発見。1994年に始まったキャンペーンのおかげで、年間4000を越していた突然死が半減した。
  • 小児癌治療の進歩。ここでは頻度の高い急性リンパ性白血病について説明されており、標準治療で90%の子供が5年以上生存できるようになったことを述べている。
  • 肺の表面活性物質を気管内注入することによる未熟児の呼吸窮迫症候群治療。これにより未熟児の出産直後の死亡は半分以下に減少した。
  • エイズウイルスの母子感染予防法確立。現在では母親がエイズに感染していても90%の子供は感染なしに生まれる。
  • 鎌形赤血球症など、根治の難しい小児慢性疾患管理法の進歩。もっぱらアメリカ黒人に多い鎌形赤血球症を例に、ハイドロオキシウレア治療、ワクチンや抗生物質による感染予防、骨髄移植による根治などの地道な進展で、現在平均寿命が40歳まで延びてきたことを示している。
  • 幼児用チャイルドシートの開発による、幼児の交通事故死の減少。この開発が、ドライバーと同乗している幼児の行動解析から生まれた成果であることを示している。

そして最後に、次に続く7つの成果を上げるためこの領域全体への助成の継続を求めて、パンフレットは終わっている。

 予想していた研究だけでなく、予想外の分野の進歩が示されることで、医学研究に対する先入観が取り除かれ、様々な分野での科学的研究が子供の命を救っていることを実感できる。また科学者社会が子供の命を救うという目的で一致して研究に取り組んでいることがよく伝わる。伝えられる内容が自分の成果を強調するペラペラの新聞記事とは大きく異なる。我が国で同じような取り組みが難しいなら、我が国の科学者は連帯のない競争だけを繰り返す人種ということになる。


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