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5月11日:新しい社会学(Scienceオンライン版掲載論文)

2015年5月11日
アラブの春でも小保方問題でも、現代社会分析に、フェースブックやツイッターの分析は欠かせなくなっている。例えばフェースブックは、自分の意見を自由に一方的に述べることのできるメディアだが(もちろん受けを狙いたい向きはおのずと意見が調整されるが)、ツイッターは最初からフォローを狙うため自分の意見をマジョリティーに近づけるモーメントを持つ。いずれにせよ重要なことは、ソーシャルネットが社会の意見や傾向の形成に大きな役割を果たすようになり、本来使命が違うはずの大手メディア(NHK)ですらヤラセを捏造ではなく編集過剰と言い逃れしてしまう時代の我が国の社会分析に、ソーシャルメディアに蓄積されたビッグデータの解析は欠かせない。ぜひやってみたいと思っていたが、Scienceにフェースブックに残るデータを分析している論文がフェースブックとミシガン大学の共同で発表された。タイトルは「Exposure to ideologyically diverse news and opinion on Facebook (フェースブック上のイデオロギー的ニュースや意見への接触度)」だ。我が国では少ないと思うが、アメリカのフェースブックでは、9%のユーザーが自分のイデオロギー上の立場(保守主義か自由主義か)を表明しているようだ。この研究ではこれに基づいて、フェースブックユーザーを保守、中間、自由主義派に分類し、それぞれがフェースブック上でどのような意見をクリックして読んでいるかを調べている。例えば保守の人はFoxNewsを好むし、自由主義の人はHuffingtonpostを好む。実際に閲覧した記事を一定の基準で保守度、自由主義度の点数をつけ、それを元に自称のイデオロギーと比べると、確かに保守と自由主義がきれいに2分していることが示され、フェースブックプロファイルの記載が概ね信じられることがわかる。次に、保守の人がフェースブック友達として自由主義の人とどのぐらいつながっているかを調べると、保守も、自由主義も20%ぐらいの異なるイデオロギーの人ともリンクしている。またそれぞれは、同じ程度の数の中間派の人ともリンクしている。最後に、一方のイデオロギーをもつ人が、他のイデオロギーの情報をクリックする頻度を調べている。重要なのは、フェースブックはお仲間のお勧めだけでなく、ニュースフィードとして一定のアルゴリズムでユーザーのネットワークに集まるニュースを提供している。これにより、保守の人も自由主義の人とリンクしている限り、逆の考えのニュースが提供される。このような状況で、それぞれのユーザーがどの程度反対のイデオロギーのお勧めに気を止めるかを調べると、自由主義者は保守主義者のお勧めを読む頻度が24%に対して、保守主義者は自由主義者のお勧めを35%の頻度で読んでいるという結果だ。誤解を恐れずに行ってしまうと、自由主義者の方が反対の意見に耳を貸さないようだ。話はこれだけだが、1000万を超す情報をこのように分析できることは素晴らしい。今後も、レビューを受ける科学的研究としてこのような調査を発表して欲しいと思う。ただ、この論文にもフェースブックの研究者が著者になっているように、フェースブック上のデータを利用するためには、まずフェースブックから許可をもらう必要がある。一番問題は、フェースブックがこれを独占することだ。あるいは、一部の人だけに分析が許されることだ。ソーシャルネットの科学的分析で、間違いなく新しい社会学が可能なら、我が国のフェースブックも独立の組織を設立し、一定の条件で思想信条に関わらず誰もがこのような科学的分析ができるようにするのが社会的責務ではないだろうか。ともかく、誰かがこれを独占することだけは阻止すべきだ。可能なら、私も是非分析をしてみたい。

  1. 池田清 より:

     私はフェイスブックやツイッターに興味なくアクセスすることもありません。多数意見が正しいものだとも思いません。こういうへそ曲がり意見が顧みられることも必要だろうと考えました。

    1. nishikawa より:

      いろんなタイプの人が含まれているのが社会で、今回示されているのは一人一人のクリック行動の平均です。もちろん全く違うパターンの方もおられると思います。平均とは同じパターンで行動しない人がいることも社会にとって重要です。

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