AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 5月12日:原核生物と真核生物をつなぐミッシングリンクの発見(Natureオンライン版掲載論文)

5月12日:原核生物と真核生物をつなぐミッシングリンクの発見(Natureオンライン版掲載論文)

2015年5月12日
1977年、Carl Wooseらがアルケアと呼ばれる古細菌類を発見して以来、地球上の生物は、原核生物、アルケア、そして真核生物に分類されるようになった(これについては私がJT生命誌研究館ホームページに昨年書いた「3種類の生物区分の誕生」をぜひ読んでほしい( https://www.brh.co.jp/communication/shinka/2014/post_000007.html )。ゲノムの比較から、アルケアが真核生物により近く、また真核生物にしかないと考えられていた細胞骨格分子等の分子の原始型がアルケアの一部に見つかることから、アルケアの研究は真核生物進化を理解するために最も重要な分野だと考えられるようになった。しかし、これまで発見されたアルケアは真核生物とはまだまだ遠く離れており、真核生物への中間段階にあるアルケアはすでに地球から失われたのではないかと考えられてきた。今日紹介するスウェーデン ウプサラ大学からの論文は、このミッシングリンクの存在をゲノムレベルで明らかにした研究でNature オンライン版に掲載された。タイトルは「Complex archea that bridge the gap between prokaryotes and eukaryotes (原核生物と真核生物の間の溝を埋める複雑なアルケア)」だ。研究では、このミッシングリンクを求めて深海、特に熱水床に近い海底を探索するうち、北極海の3000メートルの深さに2mの厚さで堆積した沈殿物の中から、新しいアルケアの存在を示す16SリボゾームRNA遺伝子を発見した。同じ場所の沈殿の中に含まれるDNAから遺伝子ライブラリーを作成し、約5Mベースの長さの仮想アルケアのゲノムを再構成して、含まれる5381個の遺伝子の中に、原核生物と真核生物をつなぐ分子が見つからないか検討した。この結果、この種は原核生物とアルケア、そして真核生物に近い遺伝子が寄せ集まったゲノムを持っており、これまで考えられていたように、原核生物とアルケアの間で活発な遺伝子交換が行われていることをうかがわせた。ただ、これまで発見されたアルケアとは異なり、実に3%を越す遺伝子が、真核生物特異的とされてきた分子をコードしていた。その中には、細胞骨格に関わるアクチンやゲルゾリン、細胞骨格の動きや、小胞体の輸送制御に関わるGTPase、そして細胞内の小胞体の輸送に関わる様々な分子が含まれていた。さらに個々の遺伝子の解析から、この種が多様化した一つの系統を形成していることも分かった。以上の結果から、細胞移動機能やファゴサイトーシス機能を備え、細胞内には小胞体が存在する全く新しいアルケアが存在していたことになる。ただこの論文では余計な想像を拝して、この世紀の大発見について淡々と報告するといったスタイルを取っている。しかし、これほど真核生物特異的分子が満載だと興奮は抑えられないはずだ。更に詳しい解析が待たれる。ただ一つ重要な問題がある。それは、全ての結果は再構成されたゲノムから想像されるもので、実際の生きたアルケアもあるいは死んだアルケアも細胞体の形が全くわかっていないことだ。従って、なんとか生きた形でこのアルケア系統を分離することが次の課題になるだろう。そのためにはゲノムの詳細な解析も必要なはずだ。いずれにせよ、ゲノムから生物を構想し、それが正しいかどうか実際の生物を培養して確かめるという面白い研究がスタートした。進化研究にとっては予想外の大きな贈り物になった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*