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5月19日:恐ろしい発見:植物を介するプリオンの感染(5月26日号 Cell Reports掲載論文)

2015年5月19日
もう記憶の彼方に消え去ったかもしれないが、2003年我が国は狂牛病が発生した米国・カナダ産牛肉の禁輸を巡って大騒ぎしていた。その後2006年小泉内閣により、輸入再開のための苦肉の策として、危険部位を除去した20ヶ月以下の牛肉に限る条件で禁輸が解除された。なぜここまで大騒ぎしたかというと、現在もなおプリオン病に対して私たちは予防以外の方策を持たないからだ。幸い、その後はこの騒ぎは静まったまま現在に至っているが、どこに新たなプリオンの種が眠っているのかわからない。実際、人間も含めて動物はプリオンと同じアミノ酸配列を持つタンパク質を作り続けている。偶然の引き金が、これをプリオン型の構造に変えるかもしれない。同じタンパクが形を変えるだけで病原性のあるプリオンに変わり、正常のタンパク質をプリオン型にたたみ直しつつ感染を拡大する。これほど恐ろしいプリオン病も、感染動物を食べなければ防ぐことができると考えられ、これが牛肉の全面禁輸騒ぎの理由だった。しかし今日紹介するテキサス大学からの論文は、この心配以外にもプリオンの種が維持され続ける経路を示唆した研究で、タイトルは「Grass plants bind, retain, uptake and transport infectious prions (草本は感染性のプリオンと結合し、維持し、摂取し、伝搬する)」だ。要するに、家畜が餌としている草が感染性のプリオンの維持伝達ルートとなっている可能性を示唆する恐ろしい研究だ。なぜこのような可能性を思いついたのかと訝しく思いながらイントロダクションを読んでみると、感染した家畜の排泄物や死体に含まれていたプリオンが、動物だけでなく、動物が飼育されている環境に保持される可能性がこれまでも示唆されていたようだ。これを実験的に確かめるため、著者らはまず、麦の根や葉を、プリオンが感染したハムスターの脳抽出液にさらして、よく洗った後感染性のプリオンが残存しているか調べたところ、プリオンは感染性を保ったまま、葉や根と強固に結合することを確認した。次に、草に結合したプリオンが動物に感染するか調べるため食べさせてみると、直接脳の抽出液を食べさせたのと同じようにプリオン病を起こして動物は死亡した。プリオン病にかかると家畜は屠殺される。したがって、直接脳に存在するプリオンが広い範囲の草に触れる心配はそうない。ただ、感染した家畜の尿や糞を通してプリオンが草と結合すると、プリオンによる環境汚染を防ぐことが難しくなる。これを確かめるため、草を尿や糞にさらした後、プリオンが結合しているかどうか調べると、結果は陽性で、排泄物を通してプリオンが環境を汚染する可能性が確かめられた。さらに、成長中の草にプリオンを含む脳エキスを噴霧した後、49日草をそのまま成長させ、成長した根や葉にプリオンが存在するか調べたところ、感染性のプリオンは成長している生きた草に長く保持されることが明らかになった。最後に、まだ種から発芽したばかりの成長前の草にプリオンを晒し、成長後の葉や茎にプリオンが存在するか調べる実験を行い、感染性のプリオンが植物内に摂取され、葉や茎に維持されることを明らかにした。この結果は、感染性のプリオンは低い濃度で環境と家畜を出入りしながら量を増やしている可能性を示唆している。プリオン分子が一個でもあれば、動物内でプリオン型分子の数は増加できるので、濃度が低くてすぐに病気が発症しない場合も、環境と動物を行き来するうち、病気発生が起こるかもしれない。もしそうなら、プリオンに汚染された環境ではいつか必ずプリオン病が発生する可能性が残っている。さて、この新しい可能性にどう対応すればいいのか、にわかには信じれないが、冷静に議論する必要がある。

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