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6月6日:フッ素18ラベル抗体を使った生体イメージング(ACS Central Scienceオンライン版掲載論文)

2015年6月6日
昨年10月18に紹介したThe New England Journal of Medicineに掲載された、ガン特異的に発現する表面分子を狙った遺伝子導入自己T細胞移植治療についての論文は、ガンの根治を可能にする免疫治療の幕開けだったと言える (http://aasj.jp/news/navigator/navi-news/2309)。この治験はリンパ性白血病という、キラーリンパ球が届きやすい腫瘍を狙ったものだったが、当然の事ながら現在は膵臓癌などの固形ガンをこの方法で治療できないか試みが始まっている。ただこの治療で一番問題になるのが、ガン特異的表面抗原を探す事だ。前に紹介したリンパ性白血病の治療では、CD19と呼ばれるガンだけでなくB細胞にも発現している抗原を使っていたため、ガンはいうに及ばす、B細胞まで消失しまっていた。それだけキラー活性が強いという言い方ができるが、もし抗原が命に関わる細胞に発現していると大変だ。従って今後の研究方向は、できるだけガン特異的抗原を探す事、そしてヒトの体の中でこの抗体がガンにしか発現していない事を確認する必要がある。この目的には抗体をアイソトープでラベルして、PETでガンをイメージングする方法の開発が必要だが、どうしても半減期の長いアイソトープしかタンパクのラベルには用いられなかった。現在PETに最もよく使われているのはフッ素18で、これはエネルギーが強く半減期が2時間と短い。ただ様々な分子をフッ素18で安定にラベルする方法の開発にはどうしても時間がかかっていた。今日紹介するホワイトヘッド研究所からの論文はフッ素18を抗体のラベルに使う方法の技術開発でASC Central Scienceオンライン版に掲載された。タイトルは「Use of 18F-2-fluorodeoxyglucose to label antibody fragments for immuneo-positoron emission tomography of pancreastic cancer (18F-2-fluorodeoxyglucoseを抗体フラグメントラベルに用いて膵臓癌に対する反応をPETで検出する)」だ。この論文では技術の有効性を示すため膵臓癌へのリンパ球浸潤モデルを使っているが、もともとこのグループはこの技術をリンパ臓器のイメージングに使おうとしていたようで、同じ技術について5月12日号のアメリカアカデミー紀要に掲載している(PNAS 112, 6146,2015)。いずれにせよこの2報の論文の最大のハイライトは、ガンのPETイメージングに最も使われているフッ素18FDGをバクテリアの持つソルターゼという酵素を使って抗体のC末端についているソーティングシグナルペプチドに結合させる方法を開発したことだ。こうしてラベルした抗体を使って、免疫反応を生体内でイメージングできることを、膵臓癌の周辺に起こるリンパ球浸潤モデルで示している。話はこれだけだが、将来性は大きい。何よりも放射線薬として調達が最も容易なフッ素18ラベルしたFDGを原料として使える点、CARTに必要なガンの表面抗原探索だけでなく、ガンに対する免疫反応もモニターできる点が極めて重要だ。例えば今はやりのPD1やPDL1のモニターも可能だろう。抗体をラベルしたいとは誰でも考えているはずだ。他にもいろんなラベルの可能性があるだろうが、抗体の細胞内でのソーティングに注目したのはなかなかやるなと思って著者を見ると、なんと私がケルン留学時代に同じ研究所にいたHidde Ploeghではないか。一貫して抗体やMHCの細胞内移送を研究していた成果がここに現れたように思う。Hiddeはイケメンでうちのカミさんの憧れの君だった。以前会った時はこのイケメンの面影は消えてカミさんもがっかりしていたが、スマートさは変わらなかった。この技術が他の技術より優れていたらおそらく楽隠居は間違いないだろうと思う。Congratulation.

  1. 橋爪良信 より:

    スマートな標識反応です!
    N末端やリジン残基のアミノ基を指向すると、選択性に問題があること。ひいては、抗体価を損なうことが懸念されます。

    1. nishikawa より:

      橋爪さんのように、イケメンでスマートな研究者でした。

  2. 橋爪良信 より:

    先生、恐縮です。

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