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6月24日:ネアンデルタール人の曾孫(4代目)にあたる現代人のゲノム(Natureオンライン版掲載論文)

2015年6月24日
古代人の遺伝子解読が加速している。この分野の話は毎月のようにトップジャーナルに掲載されている。私のホームページでも6月13日青銅時代の人たちのゲノムを比べ、インドヨーロッパ語の起源を調べた論文を紹介したところだ(http://aasj.jp/news/watch/3584)。他にも1996年ワシントンで発見されたアメリカ大陸で出土した最も古い人骨、ケネウィック人のゲノム解析論文がNatureオンライン版に掲載されている。最近の論文を見ていると、この分野の研究がいくつかのセンターに集中しているのがわかる。最近特に活発なのがデンマーク自然史博物館で、このHPでも4回は紹介し、アメリカのケネウィック人の解析にも関わっている。一方、本家本元のライプチッヒにあるマックスプランク研究所も負けてはいない。今日紹介するライプチッヒからの論文はルーマニアから出土した約40000年前の現代人のゲノムがネアンデルタール人遺伝子を6−9%も受け継いでいるという驚くべき結果で、Natureオンライン版に掲載された。タイトルは「An early modern human from Romania with a recent Neanderthal ancestor (ネアンデルタールの先祖に近いルーマニアから出土した初期現代人)」だ。この研究はこの分野の草分けベーボさんの研究室から発表されており、ルーマニアOaseから出土した37000−42000年前と思われる現代人の先祖の骨からDNAを抽出し、ゲノムを調べている。6月13日にも紹介したが、サンプルを汚染している目的外のDNAから目的の古代人のDNAを抽出するために、様々な方法が開発され続けており、これが研究を加速させている。この研究でもライプチッヒで新しく開発されたウラシル選択と呼ばれる方法が用いられている。この方法は、cytosineが時間が経つと脱アミノ酸化されウラシルに変化することを利用して年代変化を経た遺伝子だけを精製する技術で、これにより遺物の発掘や処理に関わった人から汚染してきたDNAを取り除くことができる。なかなか上手い方法だ。実際、最初はたかだか0.1%程度しか古代人のDNAを含まないサンプルから、まず人間のDNAを集める。このサンンプルのなんと67%は遺物の処理に関わった現代人のDNA由来だ。そこからウラシル選択を行うとこの汚染を4%まで落とすことができる。こうして得られたOase人のゲノムを解析したところ、中石器時代のヨーロッパ人とは多くの共通性を持つが、現代ヨーロッパ人の先祖ではないことがわかる。お隣のKostenki人のゲノムが現代ヨーロッパ人に流入していることと比べると、この時代どのような人の流れがあったのか今後重要な課題になるだろう。この研究のハイライトは、今回解析したゲノムの6−9%がネアンデルタール人からの流入で、しかも50Mbを超す領域がそのままゲノム中に維持されていることだ。計算上、4代から6代までの先祖がネアンデルタールということになり、40000年前に普通にネアンデルタールとの交雑が行われていたことを示している。この結果を受けて、すでに多くの考古学者が新しい骨を求めてルーマニアを探索していることだろう。繰り返すが、ゲノムによる新しい歴史学が21世紀のトレンドだ。このロマンを是非我が国の若い研究者が味わえるようにするのも科学技術行政の重要な課題だと思う。

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