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7月4日:近親交配の影響(7月1日号Nature掲載論文)

2015年7月4日
交配による品種改良経験から、近親交配を続けることは動植物の生存にとって悪い影響があることは理解されてきた。理由として、劣性遺伝する様々な遺伝変異が両方の染色体で揃うホモ接合性の確率が近親交配で上がる結果、子孫が淘汰されるからと考えられてきた。事実、孤立して暮らす小さな集団(例えばアメリカのアーミッシュ)は遺伝病の罹患率が高い。従って、私たち人間も近親交配でゲノム上のホモ接合部分が増えると淘汰されることを繰り返し、現在に至っていると考えられている。今日紹介するのは、ホモ接合性の悪影響を受けやすい性質について調べた我が国も含む236施設が協力した国際共同研究についての論文で7月1日号のNatureに掲載されている。タイトルは「Directional dominance on stature and cognition in diverse human population(多様なヒト集団の体格と認知機能の遺伝的優性性)」だ。これまでホモ接合性の影響の調査は、家族歴を元に行われていた。この研究では、354224人という膨大な数の様々な民族の全ゲノムレベルの一塩基変異(SNP)を調べ、両方の染色体に見つかる同じ由来のホモ接合領域を全てリストし、ホモ接合部位の長さ及び数からホモ接合性を算定し、16種類の形質との相関を調査している。まず民族ごとにホモ接合性を調べると、長さと数は相関し、予想通りアーミッシュや、シチリアの村のように他の社会から孤立して生きてきた集団はホモ接合性が高い。一方、私には意外だったが、アフリカ人は多様性が高く、ホモ接合部位が低いことがわかる。さて、この調査から明らかになった形質との相関だが、1)背の高さ、2)呼吸機能(1秒率)、3)認知機能、4)教育期間(程度)は、ホモ接合性と逆相関する。すなわち、ホモ接合性が高い人ほど劣る。例えばいとこ同士結婚による子供にみられる程度のホモ接合度に換算すると、身長で1.2cm、教育達成度では、教育を受ける年月が10ヶ月少なくなっている。一方、血圧、血統、血中脂質などは全く相関がない。従って、人間の場合ホモ接合性が高まると体格と知能に悪影響があると結論できる。「なんだ、それだけのことか」と、わかっていたことだが、ゲノム研究が発展し、膨大なデータが集まって来たおかげで、素朴な疑問に真正面から取り組むことができ、人間のことをますます深く理解できるようになっている。このようなデータベースがさらに整備されると、人間についての研究が、実験室だけのものでなくなり、アカデミズムにとらわれない研究が進むような予感がする。

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