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7月14日:減数分裂に関わる分子を網羅的に探す(7月6日号Nature掲載論文)

2015年7月14日
20世紀後半の20年の生命科学は遺伝子ハンティングの時代だった。特定の過程に関わる分子を特定するために、様々な方法が開発されたし、それぞれの研究室は工夫を凝らし、クローニングの一番乗りを果たそうとしのぎを削った。しかしこの挑戦に直接関わる大学院生や若手研究員にとっては、一番乗り以外は意味がないという熾烈な力仕事で、大きなプレッシャーの中で苦労を重ねていたと思う。当時の逸話は挙げればきりがない。ただ21世紀に入るとゲノムが解読され、存在する遺伝子は原則すべてわかったという時代が来た。このためそれぞれの遺伝子や遺伝子ネットワークの働きを解明するエレガントな研究が増えた印象がある。とはいえ、生命科学には素朴な力仕事の伝統は生きている。今日紹介する英国MRCからの論文はそんな伝統を彷彿とさせる研究だった。タイトルは「Live imaging RNAi screen reveals genes essential for meiosis in mammalian oocytes (ライブイイメージを用いたRNAiスクリーニングにより哺乳動物卵の減数分裂に必須の遺伝子が明らかになる)」で、7月6日号のNatureに掲載された。哺乳動物の卵子は1回目の減数分裂の途中で止まったまま受精を待ち、その後2回目の減数分裂を完成する。その結果、極体と呼ばれる小さな細胞と、大きな卵が形成される。このプロセスは複雑で、しかも失敗が多く、この失敗が流産につながったり、染色体異常の原因になると考えられている。ただ、培養細胞でこのプロセスを再現することは大変で、これに関わる分子の探索は簡単でなかった。この研究ではこの課題を、マウス卵巣から採取した一個一個の卵の減数分裂を試験管内で誘導し、そのすべての過程をビデオで記録する時、RNAiと呼ばれる方法で遺伝子の機能を抑制してその影響をイメージングで読み取り、減数分裂各過程に関わる分子とその機能を明らかにしようという、まさに力仕事だ。もともとRNAiは大きな卵内の遺伝子操作には向いていないとされていたが、この研究では卵巣から採取したばかりの卵に注入する方法でこの問題を解決している。あとはビデオを撮り続けて異常を起こすRNAiをただただ探し続けている。この結果、この時期の卵に発現が高い774種類の遺伝子の中から、減数分裂時に染色体維持に関わる分子、紡錘糸形成に関わる分子、細胞分裂に関わる分子を特定している。一つ一つの分子について紹介するのは割愛するが、すでに機能が特定されていた遺伝子も当然この中に含まれており、哺乳動物卵の減数分裂に関わる分子のリストとしては包括的なリストが出来上がったと評価する。今後、リスト中の分子の関わりについて、同じアッセー系(分析系)を用いて調べていくのだろう。20世紀分子生物学の力仕事の伝統を改めて感じさせてくれた仕事だった。

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