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7月29日:Common variable immunodeficiency (分類不能な免疫不全症)の新しい原因:臨床研究から基礎研究へ(7月24日号Science掲載論文)

2015年7月29日
Common variable immunodeficiency(CDI)という診断名がある。よく原因がわからないが、免疫不全と自己免疫病や、リンパ球増多症が同居する不思議な状態で、現役の時も分かったという感じがしなかった。特に免疫領域で阪口さんの制御性T細胞(Treg)が定着してからは、全体の反応バランスがブレーキとアクセルで微妙に調整されていると考えられるようになり、単純化して状態を把握することが難しくなった。さらにTregが発現して免疫のチェックポイントを調節するCTLA4のシグナルも一筋縄ではいかない。細胞内の小胞に蓄えられていて、刺激とともに急に表面に出る。とはいえ、CTLA4の機能を阻害したり、CTLA4の代わりになる物質が開発され、免疫を上げたり下げたりする目的で使われている。今日紹介する米国国立衛生研究所からの論文は、CDIの一つの原因遺伝子を突き止めて、なぜこの変異がCDIを引き起こすか調べた研究で7月24日号のScienceに掲載された。タイトルは「Patient with LRBA deficiency show CTLA4 loss and immune dysregulation responsive to abatacept therapy (LRBA欠損の患者さんはCTLA4の発現が低下し、abataceptに反応する免疫異常を示す)」だ。タイトルにあるabataceptというのは、CTLA4の作用を真似する目的で開発されたCTLA4とヒト免疫グロブリンFc部分のキメラ蛋白で、免疫を抑える目的で現在リュウマチに利用されている。経緯は詳しく書かれていないが、おそらくゲノムを調べるうちCDIの患者さんの中にLBRA分子の突然変異がある症例が発見されていたのだろう。この研究では両方の染色体でこの分子が突然変異を起こしている患者さんを調べている。患者さんは特に自己免疫による炎症が強く、また肺の炎症で呼吸機能が強く低下している。この患者さんの治療の一環としてabataceptを投与したところ、大きな効果が見られ、炎症が治まり、呼吸機能も回復したことから、このグループはLRBA機能不全がCTLA4の発現異常を起こしているのではと考え、今回の研究につながっている。詳細は割愛して結論だけをまとめると、LRBAは小胞体で蓄えられるCTLA4と結合し、リソゾームに移動して分解させないようにし、リサイクルを促進する過程に関わるという結論だ。このため、この分子が欠損すると分解が進み、CTLA4のリサイクルがうまくいかず、免疫のチェックポイント機能が働かなくなるという結論だ。これまでスッキリしなかったCDIについて、ある程度頭の整理がついてきた気がする。私がまだ免疫学にタッチしていた頃にホットトピックスだった話が、CDIという複雑な病気の理解に総動員され、その結果患者さんを治療することができるようになったという話で、納得の論文だった。しかし、CDIをはじめ原因がよく分からない病気はゲノムから調べてみることの重要性を再認識した。

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