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9月21日:ピロトーシスのメカニズム(9月16日号Nature掲載論文)

2015年9月24日
今日は24日でこの間、案の定ネットは繋がらなかった。書きためた論文ウォッチを順々に、書いた日付に合わせて掲載する。 細胞の死に方をネクローシスと、アポトーシスに分けて理解できていた頃は楽だった。私自身この分野をほとんどフォローしていなかったが、両者とは違う新しい死に方が定義され、ピロトーシスと呼ばれるようになっていたようだ。今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文はピロトーシスが誘導されるシグナル経路を特定した研究で9月16日号のNatureに掲載された。タイトルは「Caspase-11 cleaves gasdermin D for non-canonical inflammatosome signaling (インフラマソームの非主流シグナルをカスパーゼ11により切断されたgasderminDが担っている)」だ。一般の人でなくとも、このタイトルは分野がことなう研究者にとってもチンプンカンプンだろう。まずピロトーシスから説明すると、細胞内に取り込まれた細菌細胞壁に発現する内毒素により誘導される細胞死で、細胞が溶解する点ではネクローシスト同じだが、DNAの断片化が見られる点ではアポトーシスと同じであり、独立のシグナル経路が関わることがわかっていた。これまでの研究からカスパーゼ1が活性化されるとピロトーシスが起こることはわかっていたが、細胞内に取り込んだ細菌の内毒素によるピロトーシスの詳細はほとんどわかっていなかったようだ。タイトルにあるインフラトソームはこのシグナル誘導に関わる様々な分子の複合体で、この中に存在するカスパーゼ11が内毒素によるピロトーシスに関わることは知られていた。この研究の目的は細胞内内毒素の刺激からピロトーシスまでの経路の解明で、Pam3CSK4と共培養することで誘導されるIL-1βを指標に突然変異マウスを探索し、gasderminDとカスパーゼ11遺伝子突然変異マウスがこの経路に異常があることを発見する。このスクリーニングで使われた突然変異体は共著者のオーストラリアのGoodnowがずいぶん前に、マウスを使ってショウジョウバエと同じように全遺伝子について突然変異体の分離を行おうと始めたプロジェクトで、現在も粘り強くプロジェクトが進んでいるのを知ると感心する。はっきり言ってこの二つの分子を特定できたことでこの研究の大枠は完成している。インフラソゾーム構成分子のカスパーゼ11は予想していたかもしれないが、gasderminDが引っかかってきたのは驚きだったろう。というのも、この分子は哺乳動物にしかなく、またカスパーゼ1活性化によるピロトーシスにはgasderminDが必要ないことがわかっていたからだ。様々な遺伝子欠損マウスを使ったシグナル解析から、1)細胞内内毒素によるピロトーシスには、カスパーゼ11活性化と、それによるgasderminD分子の活性化が必要なこと、またこの経路が致死的敗血症の原因であることを明らかにしている。詳細は省くが、内毒素による活性化されたカスパーゼ11/gasderminDはカスパーゼ1の上流で働いているため、カスパーゼ1を直接活性化するとgasderminD非依存的にピロトーシスが起こるというシナリオを提案している。したがって、脊椎動物で一般的に見られるピロトーシスを細胞内内毒素の刺激とリンクさせたのがgasderminDの進化の結果ではないかと結論している。ますます細胞の死に方が複雑になっているという印象だが、細胞の死に方の調節がいかに重要かを実感する論文だった。

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