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9月23日:母性の脳回路(9月16日号Nature掲載論文)

2015年9月24日
マウスの脳に光ファイバーを留置して、光照射で特定の神経細胞を興奮させ、高次脳機能への影響を見る光遺伝学の開発は、これまで推定することしかできなかった、特定の神経と行動との相関を特定することを可能にした。この技術は記憶などの高次機能の研究に使われているが、素人が読んでわかりやすく面白いのはやはり行動の研究だろう。今日紹介するイスラエル ワイズマン研究所からの論文は子供を育てる母性特異的行動についての研究で、9月16日号Natureに掲載された。タイトルは「A sexually dimorphic hypothalamic circuit controls maternal care and oxytocin secretion(性に左右される下垂体神経回路が母親の子育てとオキシトシン分泌を調節している)」だ。もともと下垂体の神経細胞の構成はオスとメスで異なることが知られていた。このグループは中でも下垂体脳室周囲の腹側前方部にドーパミンを作るときに必要とするTHを発現した細胞がメスで多いことに注目した。さらにこのTH陽性細胞はメスの中でも出産の経験後に大きく増加することがわかった。そこで、細胞毒をこの部位に注射して行動を調べると、生理や性行動には影響がない一方、メスが子供の世話する母性に影響があることが分かった。逆にこの神経を光遺伝学テクノロジーを用いて刺激すると、普通なら子供のケアをしない出産経験のない若いマウスも、すぐに子供のケアを始めることを発見した。一方、神経細胞除去をオスで行うと、子供に対する攻撃性が上昇し、逆にTH神経細胞が興奮するとこの攻撃性が減少することが分かった。最後に、この行動の差を決めるメディエーターを探索し、最終的にこの神経が傍室核のオキシトシン分泌細胞を直接刺激して母性を誘導することを明らかにしている。この経路の最終結果は、オス、メスともに子供を守る行動に収束するが、オキシトシン分泌後の行動については今後の研究が必要だという結論で終わっている。オキシトシンが社会性を促進する効果の中に、母性や父性の獲得も加わったようだ。

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