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9月24日:米国医学部での男女差別(9月15日号アメリカ医師会雑誌掲載論文)

2015年9月24日
安倍内閣の一つの柱は「女性の輝く社会」だが、男性中心にすでに出来上がった組織を変えるためには綿密な戦略が必要だ。ただ、役所や産業界に女性登用を呼びかけるだけでなく、例えば「女性の活躍を妨げるあらゆる要因を、罰則を持って取り締まる」といった罰則を伴う対策が必要になる。女性の活躍を妨げる要因の一つは、組織の構成が男性をトップに階層化されていることなので、もしペナルティーが明確なら、あらゆる組織で一度は女性をトップに据えて見ることが可能か問われるだろう。ただ、女性なら誰でもいいという訳にはいかないだろうから、すでに女性が育っている組織、これから養成が必要な組織など詳細な分析が必要になる。あまり問題にならないが、我が国で男性優位が際立っている組織の一つは大学の医学部だろう。私が京大医学部教授会に属していた時、教授会に女性はいなかった。その後富樫さんや柳田さんが教授になったが、それでも際立って男性優位だ。一方講義をすると分かるが、京大医学部は女性入学者が2割程度で、他の大学と比べるとかなり低いように感じる。こんな現状を見ると、国立大学医学部は男性優位組織を変革する政策立案のモデルとしては格好の材料になる気がする。今日紹介するハーバード大学からの論文は米国医学部での女性の占める割合についての詳細な調査で9月15日号アメリカ医師会雑誌に掲載された。タイトルは「Sex differentces in academic rank in US medical schools in 2014 (2014年時点でアメリカ医学部での地位に関する男女差別)」だ。アメリカの医学部も1970年までは男性優位組織だったが、その後女性教授の比率も増え、現在ではフルプロフェッサーの数が男性17000人に対し、3600人にまで上がってきている。しかし40年たっても20%を切るということで、完全平等を目指して調査を続けているようだ。これまでの調査と違って、例えば大学のランクと女性比率、あるいは各分野の女性比率、教授になるまで、またなってからのNIH研究助成採択率など、詳細な調査が行われ、資料として手元に置いておく価値はある。裏返すと、いちいち紹介するにはあまりに詳細で、まとまりがつかない。したがって、面白いところだけつまみ食いして紹介するにとどめる。まず年齢で見ると、まだ教授にはなっていないがファカルティーの女性メンバーが若い世代ほど多い。したがって、これまでの取り組みが一応功を奏して、徐々にではあっても今後女性の数がさらに増えると予想できる。ただ内科・小児科の比率が多く、他の分野でもいい指導教官につけるようにするなど、今後改善する部分は多い。面白いのは、ファカルティーで比べた時グラントの採択率、論文数では男性が倍以上多い点だ。一方、治験への登録率ではそれほどの差がない。他に、内科でいうと血液学、腫瘍学、放射線学では男女の比率がほとんど同じになっている点だ。なぜこれが可能になっているのか、今後詳しく調べる価値はあるだろう。一方、トップランクの大学ほど女性が教授になれる比率が少ない。この点もそのメカニズムを明らかにする必要がある。最後に、この研究では1980,1990、2000年にレジデントになった医師のコホート研究を続けており、平等を目指して取り組みが始まってから30年たっても、まだ男性がファカルティーになりやすいという状況が見られることも指摘している。いずれにせよ、男女共同社会実現には、計画の進展とともに当然阻害要因も変化することを理解し、不断に阻害要因を洗い出す長期的視野の調査が必要だ。我が国でもこのレベルの調査を医学部でも進めるべき時がきたのではないだろうか。

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