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9月25日:乾癬性関節炎の抗IL-17抗体治療(9月19日号The Lancet掲載論文)

2015年9月25日
ガンに対するPD1やCTLA4に対する抗体を始め、多くの抗体薬が臨床に使われているが、最初の口火を切ったのはリューマチなどの免疫系疾患に対する抗TNF抗体だった。実際、この抗体はリュウマチ治療を変えたと評価されている。その後我が国からの抗IL-6治療も加わり、それぞれが補完しあって、従来の方法ではコントロールが困難だった免疫疾患の治療が可能になってきた。さて、免疫学の論文を読んでいると、TNF,IL6に加えて、炎症の親玉のようなサイトカインとしてIL-17が出てくる。当然この分子に対しても抗体薬が開発されてきたようで、今日紹介する論文は乾癬性関節炎に対する抗IL-17A抗体の作用を調べた第三相の国際治験の結果だ。タイトルは「Secukinumab, a human anti-interleukin-17A monoclonal antibody, in patients with psoriatic arthritis :a randomized double blind placebo-controlled phase 3 trial (ヒトIL17Aに対するモノクローナル抗体セクキヌマブによる乾癬性関節炎の治療:偽薬を用いた無作為化二重盲検第三相治験)」だ。免疫疾患の抗体治療についてはすでに日常診療での治療として定着しているため、ほとんどフォローしてこなかったが、乾癬や乾癬性関節炎は抗体治療も含め、これまでの治療に抵抗性を示すものが多かったようだ。このため、抗IL17抗体の治験は乾癬と乾癬性関節炎に焦点を当てて行われている。乾癬性関節炎は乾癬の患者さんの3割程度に発症する関節炎で、リューマチ性関節炎より関節炎としては軽度なことが多い。これまで抗体薬としては抗TNFが主に使われているが、最近になって抗IL12/24もこの病気に効果があることが示されているようだ。ただそれでも治療に反応しなかったり、あるいは副作用が強い患者さんが存在し、抗IL17でコントロールできないかというのが今回の治験の目的だ。この抗IL17抗体セクキヌマブはすでに乾癬の患者さんを中心に登録されているだけで54の治験が行われている。ただ、これまで発表された結果は期待できるもので、その延長として今回の第三相治験が計画された。この治験では静脈に注射するのではなく、長期効果を得るため、最初は週1回4週投与した後は、月1回という投与スケジュールで24週目で効果を判定し、その後の経過は52週まで見ている。結果はこれまでと同じで、アメリカリュウマチ学会の治療による改善指標で20%改善する患者さんの率が6割程度、50%症状改善が35%程度あり、このレベルは月一回の抗体治療で維持できるという結果だ。先ず乾癬や乾癬性関節炎から入って、他の疾患にも適用拡大する戦略だ。ただClinical Trival gov.での登録を見るとほとんどが乾癬か乾癬性関節炎で、リューマチ性関節炎、強直性関節炎などが加わり始めた段階のようだ。その意味で、今回感染性関節炎への一定の効果の確認は開発会社(ノバルティス)にとっても朗報だろう。ただ同じ病気に対して異なる分子を標的にすることが進み、抗体治療は複雑になっていく気がする。その意味で、今後TNF, IL6, IL12, IL-17などに対する抗体の効果の差がどのように出てくるのか、差があるとしたらその背景は何かなど症例を集めて検討することで、エフェクターフェーズの炎症の個人差など面白い問題がわかるように思う。ヒトの免疫学が徐々に進展してきているが、様々な分子を標的とした抗体治療の患者さんから得られるデータの価値は計り知れないだろう。さて副作用だが、死亡例はなく重篤な副作用も1割程度で止まっているようだ。この副作用としてカンジダ口内炎が発症するのはわかるが、炎症を抑えているのに潰瘍性大腸炎が起こるケースがあるのは不思議な気がした。一方、扁平上皮癌が3例に起こっているのも、現在進んでいるガン免疫チェックポイント治療と合わせて見ていくと面白いヒントが得られる気がする。抗体薬はその特異性で際立っている。そのため、治療を受けた患者さんの経過や免疫状態を詳しく調べることは人間の免疫機能やその多様性を理解するために今後重要になると思う。効いた効かないにとどまらず、ヒト免疫機能の基礎に迫る研究が我が国の臨床研究者から生まれることを期待したい。

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