AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 10月24日:生命の誕生時期(米国アカデミー紀要オンライン版掲載論文)

10月24日:生命の誕生時期(米国アカデミー紀要オンライン版掲載論文)

2015年10月24日
これまで一般の人に生命誕生時期について問われたら、「地球上の生命は37−38億年前に誕生した」と答えてきた。しかし当時の生物はもちろん単細胞で、化石と言っても発見するのは大変だ。昨年生命誌研究館のホームページ(http://www.brh.co.jp/communication/shinka/2014/post_000005.html)に書いたように、それでも35億年前の最古の生物化石が西オーストラリアのストロマトライトの中に発見されている。最古の化石が35億年なのにどうして生命誕生は37−38億年前なのか?適当に2−3億年足して37−38億年としているのだろうか?もちろんそんないい加減な決め方ではなく、一応科学的根拠を元に算定されている。すなわち生命由来の有機化合物には炭素同位元素13Cの含量が低いという性質を利用して、38億年前の岩石に残る炭素から生命の存在を推定している。具体的には、グリーンランドのイスア地域の37億年前にできたとされる堆積層で発見されたグラファイト中の13Cの測定を元に、37億年前には生命が存在したと推定している。ではそれ以前に生命は存在しなかったのかとなると難しい。なぜなら、その時代にできたことが証明できる地層を発見すること自体が難しい。従って、研究はまず40億年以前に形成されたことがはっきりした鉱物を探すことから始まる。今日紹介するUCLAからの論文は西オーストラリアJack Hillで発見された40億年以前に形成されたジリコニウムの中に存在するグラファイトが生物由来であるという研究で米国アカデミー紀要オンライン版に掲載された。タイトルは「Potentially biogenic carbon preserved in a 4.1 billion-year-old zircon(41億年前のジリコニウムの中に保存されていた生物由来と考えられる炭素)」だ。この研究は38億年より以前に形成されたジリコニウムの結晶に多くのグラファイトが含まれているという発見から始まっている。グラファイトは言うまでもなく炭素の結晶で、細菌の質量分析技術の進歩で小さな結晶の13C含量を測ることができる。研究では採取したジリコニウム結晶にグラファイトが含まれるか丹念に調べ、グラファイトと思われる結晶の成分分析をまずラマン分光により確認、最後に我が国のSpring8に相当する放射光による質量分析を行い、13C/12C比を測定している。結果は生命由来と考えていい数値にこの比が収まったため、生命は41億年前には存在していたという結論だ。あとは、このグラファイトがジリコニウム結晶の形成時に封入されたのかどうかだが、信じない人も出てくるだろう。いずれにせよ、これから一般の人の質問には、この研究についても言及する必要があるだろう。法則性がない領域では、過去に起こったことの証明が一番難しいのは、100年も経っていない歴史問題がこれほど議論になることからもわかる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*