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12月4日:スマフォ経済学(11月27日号Science掲載論文)

2015年12月4日
ルワンダと聞いて私がすぐに思い浮かべるのは、1994年に勃発した内戦と、フツ族による大虐殺で、今でも当時テレビで放映された路上でフツ族がツチ族をナタでことも無げに切り倒している光景を思い出す。Jeffery Sachsの「 The end of poverty (貧困の終り)」を読むと、結局内紛と感染症が成長可能性の高いアフリカの経済発展を阻害する最も大きな要因であることがわかる。今日紹介する米国ワシントン大学からの論文を読んで、そのルワンダが150万人の携帯電話を所有する国に生まれ変わっていることを知った。人口1千万強であることを考えると、国民の15%が携帯を所有できるようになっていることから、政治が安定し、成長が始まっていることがわかる。この論文はこのルワンダをモデルに、国内の富や活動性のマップを携帯の通話記録から把握できないか調べた研究で、11月27日号のScienceに掲載された。タイトルは「Predicting poverty and wealth from mobile phone metadata(携帯電話のメタデータを使って貧困と富を予測する)」だ。この研究では、ルワンダの最大携帯ネットワークからデータを分析し、通話の頻度や相手の多様性、通話場所や通話先の変化など様々な属性を使って地域間の貧富の差を明らかにできるのではという仮説を検証している。そのため、ルワンダ各地から万遍なく選んできたサンプル856人の承諾を得て、財産や家の所有など経済状況を調査する。この結果と、通話記録から得られるデータを付き合わせて、携帯電話所有者の経済状況をどこまで正確に推定できるかをまず検討している。このサンプル856人のデータから、通話記録から推定される富と聞き取りで調べた富とが十分な精度で相関することを確かめている。すなわち、裕福な地域では携帯電話がより頻繁に使われる。他にも、通話記録から推定される行動の広がりは、バイクの所有と相関するし、また身近な人とだけ通話が限られる場合は貧困度と相関することがわかる。こうしてパラメータを設定した上で、ルワンダの富と貧困のマップを描いて見せている。このマップの正確性を確かめることは、他の手段がないため難しいが、ルワンダ政府が出している国勢調査や、衛星から捉えた地域の明るさのマップと矛盾しないことから、携帯通話記録から描く富の分布マップは利用価値があると結論している。一般的に国勢調査には金がかかり、開発途上国ではそう簡単に行えない。一方この調査は12000ドルで済んだそうで、今後同じ手法で国内の富の分布をリアルタイムで把握できることは、開発途上国の政策決定に有効な方法を提供するのではと提案している。しかしルワンダですでに15%の人が携帯を使っていることに驚くとともに、携帯の通話記録から平和と戦争を推定することもできるはずだと思った。

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