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1月20日:血清中のDNAの起源(1月14日号Cell掲載論文)

2016年1月20日
   血清中には、濃度は低いものの短い2重鎖DNAが存在していることが1947年から知られている。これは、アポプトーシスを起こした後の細胞から漏れ出てきた断片化されたDNAで、健常人ではほとんどが血液細胞由来で、寿命は短い。この血清中のDNAが注目されるようになったのはアポプトーシスを起こした癌細胞から同じように漏れ出たDNAを診断に使える可能性が指摘されるようになってからで、liquid biopsyと呼ばれて、すでに診断に利用されようとしている。他にも、ダウン症の21番染色体トリソミーを検出する方法の開発により、安全な出生前診断としても注目されるようになっている。ただ、死細胞の多い組織や血清にはDNA分解酵素が存在することから、どんなDNAがこの関門をくぐり抜け、短期間であっても血中で検出されるのか、その生成のメカニズムを知ることは、今後の利用に必須の要件だ。今日紹介するワシントン大学からの論文はこの問題の解決を目指した研究で1月14日号のCell に掲載された。タイトルは「Cell free DNA comprises an in vivo nucleosome footprint that informs its tissue of origin (血中のDNAは生体内でのヌクレオソーム・フットプリントで、このパターンで細胞の起源がわかる)」だ。
  タイトルにあるヌクレオソーム・フットプリントとは、染色体構造を調べる目的で使われる実験主義で、DNA分解酵素の作用が、DNAに結合しているタンパク質により阻害されることを利用している。具体的には核タンパク質がついたままDNAを分解酵素で処理すると、タンパク質が結合していない裸のDNAは全て分解されるが、タンパク質の結合しているDNAは分解されずに残る。これにより、DNAが裸のままむき出しになっている部分と、それ以外の部分を区別することができる。DNAとタンパク質の結合というと転写因子の結合を思い出すが、実際にはヒストンにDNAが巻きついたヌクレオソームでの結合がその大半を占める。この研究では血中に存在するDNAの大きさをまず測定して、これがほぼヌクレオソームに巻きつくDNAの長さに一致していることを確認し、血中に流れるDNAはヌクレオソーム構造で守られたDNAと、転写因子などの配列特異的タンパク質により守られたDNAが混合したものであることを証明している。次に、こうして得られたタンパク質と結合したDNAの分布をゲノム全体に並べると、分布パターンからDNAが由来する細胞起源を特定できることを示し、これまで示されていたように健常人ではDNAのほとんどが白血球、リンパ球に由来することを確かめている。最後にステージIVの進行癌の患者さんの血清についても調べ、感度には難点があるが、このパターンからガンのタイプを特定できることを示している。
  DNAフットプリントを知っているほとんどの研究者は、血清中のDNAの多くが同じようにできてきたと予想していたと思うが、誰もが当たり前と思って確かめなかったことを確かめた研究と言っていいだろう。とはいえこの研究のおかげで、スーパーエンハンサーなどガン特有の転写メカニズムが明らかになった場合は、ガンの進行状態や変化をモニターする方法として使われていくような気がする。一方、早期診断という意味では、この結果はあまり役には立たないと思う。

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