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1月25日 自己免疫と腫瘍免疫のバランスをとる(1月20日号Nature掲載論文)

2016年1月25日
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  自己免疫病の発症は、免疫反応が強すぎない様に調節しているチェックポイントを外してガン免疫を高める治療法の最大の副作用だ。この問題の克服へ向けた一つのヒントが今日紹介するスローンケッタリング・ガンセンターが1月20日号のNatureに発表した論文に出ている。タイトルは「Graded Foxo1 activity in Treg cells differentiates tumour immunity from spontaneous autoimmunity (TregでのFoxo1遺伝子の発言の程度によってガン免疫を自己免疫の自然発症から分けることができる)」だ。これまで細胞表面マーカーを用いて静止Treg(rTreg)と活性化Treg(aTreg)が分けられていた。この研究では、まずrTregからaTregへの変化にAktシグナル系を介するFoxo1が関わることを突き止める。すなわち、rTregではAktが活性化されておらず、Foxo1は核に止まっているが、Aktの活性化が起こるとFoxo1が核外に移行し、Foxo1の転写活性が低下、結果としてTregが移動しやすくなり免疫を抑制し始めることを突き止める。この仮説を確かめるため、核に留まる様デザインしたFoxo1を強制発現させる実験系を用いてTregの局在を調べ、核内に残るFoxo1の量に応じて細胞の移動や増殖を調節する分子がrTreg型を示し、結果リンパ組織内での移動が起こらなくなることを示した。面白いのはこれからで、両方の染色体で核外に移行できなくしたFoxo1を発現させると、自己免疫が発症して、4ヶ月でマウスは死亡する。この免疫エフェクターはCD8T細胞であることから、rTregが活性化されず、移動が起こらないと、免疫抑制が起こらず自己免疫病が発症することがわかる。ただ、これは核内に留まるFoxo1の量に依存しており、片方の染色体だけで核外に移行できないFoxo1を発現させたマウスでは自己免疫機能は起こらない。一方、ガン免疫と核内Foxo1の量の関係を調べると、片方の染色体だけで核内に留まるFoxo1を発現する様にしたマウスで、ガンの抵抗性が増強することを突き止めている。すなわち、Treg核内に留まるFoxo1の量を調節することで、Tregによる調節機能を量的に変化させ、これによってガン免疫と自己免疫を区別して調節できる可能性を示している。実際の臨床を考えるには、Aktのシグナルを調節して抑制の程度を本当に調節できるか調べる必要があるが、残念ながらその結果は示されていない。しかし、可能性は十分で、ぜひ薬剤を使って同じ状態を再現できるか研究が進み、ガン免疫に対する抑制を落としながら、自己免疫はしっかり抑制できる方法が開発されることを望む。

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