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2月1日:他人の苦しみを慰める心の起源(1月22日号Science掲載論文)

2016年2月1日
名称未設定 1   苦しんでいる他人に寄り添い慰める行動は、人間はもちろん、類人猿や、イヌ科の動物、さらにはカラスの仲間にも観察されるようだ。しかし、動物の行動が私たちと同じような神経的背景を持つのかはわかっていない。心理学的行動実験と神経科学的実験を組み合わせやすいネズミの仲間で研究がしたいところだが、なかなかいいモデルが見つかっていなかった。
   今日紹介する米国エモリー大学からの論文は、プレーリーハタネズミ(図、Wikipediaより:https://en.wikipedia.org/wiki/G%C3%BCnther’s_vole) がこの慰める行動を示し、脳活動部位も人とよく似ており、他人との関係を調節するオキシトシンがこの行動に関わることを示した研究で1月22日号のScienceに掲載された。タイトルは「Oxytocin-dependent consolation behavior in rodents (げっ歯類で見られるオキシトシン依存性の慰め行動)」だ。
  プレーリーハタネズミ(PV)は一夫一婦で暮らす家族の絆の強い動物で、神経科学の研究にはよく用いられる。一方、アメリカ全土に生息するアメリカハタネズミ(MV)は家族を形成しない。この研究では、飼育したペアの片方にショックを与えた時、それを目撃している相手の他の行動を調べ、PVは相手に寄り添って毛づくろいをするのに、MVはそのような行動を見せないことを突き止めている。この時相手の毛づくろいだけでなく、自分の毛づくろいを盛んにするようになることから、おそらく他人のショックが自分の不安につながっていることが推定される。この不安をより客観的に調べるため、血中ステロイドホルモンの濃度を調べると、ショックを与えられたPVのみならず、それを目撃したPVもステロイドホルモンの血中濃度が上昇しており、相手のショックを自分のストレスとして感じていることがわかる。面白いのは、この行動が家族内では強く、全く無関係のPVでは反応は低い。人間でも同じ傾向が見られるが、少しはハタネズミよりは博愛主義的に発展しているようだ。最後に、このような行動に関わることがわかっているオキシトシン受容体のPVでの発現を調べると前帯状皮質、前辺縁皮質、側坐核で発現が見られるが、慰め行動で活性化されているのは人間と同じ前帯状皮質であることを示している。実際この部位に直接オキシトシンを注射すると慰め行動が減ることから、オキシトシンがこの部位の興奮にかかわると結論している。
  神経科学的には少し甘いかなと思われる研究だが、プレーリーハタネズミの家族の絆はよくわかった。一方、PVの中にはバソプレッシン受容体の「珍しい異常を示す浮気個体?」があることも同じグループから2009年に報告されている(www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.0908620106)。要するに、家族の絆の強さがわかる種だけで浮気がわかるようだ。

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