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2月15日:消化管ホルモンによる糖尿病治療の危険性に関する警告(3月号Cell Metabolism掲載論文)

2016年2月15日
  血糖に反応して小腸から分泌され、膵臓β細胞に働いてインシュリン分泌を促す消化管ホルモンGLP-1を糖尿病の治療に使おうと開発が行われ、GLP-1の受容体を刺激する薬剤、あるいはGLP-1の分解を抑制して効果を高める薬剤が現在市販されている。臨床医ではないので、この薬剤が現在どの様に使用されているのか把握できていないが、インシュリンの様な低血糖を起こさず血糖をコントロールできると、かなり普及しているのではないだろうか。
   今日紹介するマイアミ大学からの論文は、GLP-1受容体刺激剤の一つリラグリチドを長期に使用すると、β細胞のインシュリン分泌能が枯渇する危険性を警告する論文で3月号掲載予定のCell Metabolismに掲載された。「Liraglutide compromise pancreatic β cell function in a humanized mouse model (リナグルチドはヒト化マウスモデルに移植したヒト膵臓β細胞の機能を低下させる)」だ。
  研究はいたって単純で、糖尿病マウスの角膜にヒトβ細胞を含む膵島を移植し、リラグリチドを投与した群と、非投与群の糖代謝を比べている。まずこれまでの研究と同じで、投与100日ぐらいまでは、明らかに投与群の方が糖代謝を改善できている。しかし200日間連続投与すると、非投与群と比べて糖尿が再発し、全般的にインシュリン分泌が低下、またブドウ糖負荷に対するインシュリン分泌も遅れることが明らかになっている。
  マウスに移植したβ細胞組織を調べると、リラグリチドで細胞死が亢進しているわけではない。インシュリン分泌の遅れなどに基づいて、著者らは、β細胞への刺激が続くことで、インシュリン分泌能が枯渇したのではないかと想像しているが、本当のメカニズム解明にはさらに研究が必要だろう。
  またヒト化マウスという特殊な状況がこの様な結果をもたらしていないか調べる必要がある。この薬剤が2009年には認可が下りていることを考えると、長期投与を受けた患者さんがいるはずで、おそらく一番重要なのはリラグリチドを長期投与している人たちについての副作用調査だろう。動物実験を取り合う必要はないなどと無視せず、できるだけ速やかにこの調査が行われることを希望する。

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