AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 2月16日アデノ随伴ウイルスの(AAV)の受容体の特定(2月4日号Nature掲載論文)

2月16日アデノ随伴ウイルスの(AAV)の受容体の特定(2月4日号Nature掲載論文)

2016年2月16日
  遺伝子の数は有限で、人間でも2万種程度しかないと言っても、それぞれの遺伝子の機能が完全に理解できているわけではない。さらに、重要な機能であってもそれに関わる遺伝子が明らかになっていないケースはいくらでもある。そんな遺伝子の一つがアデノ随伴ウイルス(AAV)が細胞に侵入するときに利用する受容体だろう。AAVはほとんどの細胞に高い効率で感染することから、現在実現している遺伝子治療に最も広く使われているウイルスベクターだ。私自身今日紹介するスタンフォード大学からの論文を読むまで、AAVの受容体の本体はとっくの昔にわかっていたのではと思っていた。実際にはこの論文が出るまで、受容体の本命は発見できていなかったようだ。論文のタイトルは「An essential receptor for adeno-associated virus infection (アデノ随伴ウイルス感染に必須の受容体)」だ。
  これまでも多くの分子がAAV受容体候補として名前が挙がり、消えていった。この研究ではヒト1倍体(各染色体が1本づつしかない細胞)細胞株の遺伝子を遺伝子挿入法によりランダムにノックアウトした細胞ライブラリーにAAVを用いて蛍光遺伝子を導入し、感染がうまくいかない細胞を単離することで、AAV感染に必要な遺伝子を探索している。もともとウイルス感染は複雑な過程で、この方法で単一の遺伝子が特定されるのではなく、感染を支える様々な分子がリストされている。この研究ではその中からこれまで識字障害と連関すること以外全く研究がされていない膜タンパク質に注目してその後の実験を行っている。詳細を全て省いて結論だけ紹介すると、免疫グロブリン(Ig)ドメインが5回繰り返した細胞外部分を持つ蛋白質をコードするKIAA0319Lは期待通りAAV受容体分子で、N末の2つのIgドメインを用いてAAVに結合する。この分子は小胞体輸送に関わる様々な分子と結合し、ゴルジ体と細胞表面を行き来するフェリーのような運び屋分子で、受容体に結合したAAVはまず細胞内小胞に取り込まれ、ゴルジ体まで運ばれる。ただ、AAVの感染にゴルジ体までウイルスが運ばれる必要は必ずしもない。最後に、この遺伝子をノックアウトしたマウスを作成して、体の中でもこの分子がAAV受容体として働いていることを証明している。    久しぶりに細胞生物学の伝統的論文を読んだ気がするが、この結果は遺伝子治療の効率や安全性を高めるための重要な情報となると思う。特にこのベクターが実用化され始めている現在、その意義は大きいと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*