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2月20日:染色体の端(2月11日号Cell掲載論文)

2016年2月20日
   染色体は長い一本のDNA鎖で、当然2個の端が存在する。この端にはテロメアと呼ばれるTTAGGGの繰り返し配列が続くが、最後は2重螺旋が途切れて短い一本鎖DNAが繋がっている。要するに、DNAがそこでちぎれた構造をとってしまっており、そのままならこの断端を繋ごうとする修復メカニズムが働く。この特殊な断端構造を守るため働いているのがシェルタリンと総称される6種類の蛋白で、一本鎖にはPOT1、2本鎖にはTRF1,TRF2が結合し、他の蛋白がこれらを一つの複合体を形成し、これにガイドされたヘテロクロマチン型ヒストンとともにテロメア特有の凝集された不活性は染色体を形成していることが知られている。
   今日紹介するカリフォルニア大学バークレー校からの論文は、ヒト培養細胞を用いてシェルタリンのダイナミズムを詳しく調べた研究で、少しマニア向きすぎるかもしれない。タイトルはズバリ「Shelterin protects chromosome ends by compacting telomeric chromatin (シェルタリンはテロメア型クロマチンを凝集させて染色体の端を守る)」だ。
  この研究では蛍光標識したTRF2を発現させテロメア全体の大きさを測れるようにした細胞を用いて、テロメアのクロマチン構造の凝集程度を調べている。強く凝集しているときは、テロメア全体はコンパクトなクロマチンにしまわれていることになり、小さい塊にまとまる。例えば細胞周期でテロメアの大きさを追いかけると、S期で最も大きく、分裂中期で最も凝集する。これまで、DNAのメチル化や、ヒストンのアセチル化がテロメア特有の染色体凝集に関わるとされてきたが、この過程を阻害しても凝集が起こることから、テロメアの染色体構造はシェルタリンが直接調節していることがわかる。次に、シェルタリンの構成分子一つ一つの機能を阻害してテロメアの大きさを調べると、TRF2,TRF2,TIN2の3種類の分子の機能阻害で凝集が緩むことがわかる。すなわち、染色体凝集には2本鎖に結合するTRF1,TRF2がTIN2で架橋されていることが重要であることがわかる。次に、これら3種類の分子の突然変異体を作成し、凝集にはTRF1,TRF2それぞれがダイマーを形成することも必要であることを示している。
  このように基本的な役者が明らかになると、あとはこの現象とテロメアの状態を相関させればよい。実際にこの凝集によりDNA障害が防がれていることを示し、シェルタリンがメチル化ヒストンを組織化してクロマチンを凝集させることでテロメアを守っていると結論している。    ある意味では地道な研究のうちに入るだろう。普通あまり気にならないプロセスだが、研究がしっかり行われていることを実感した。

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