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9月18日 DNAメチル化と細胞周期:プロの仕事(オリジナル記事)

2013年9月18日

どこかが紹介するかなと待っていたが、残念ながら報道されることはなかった。名古屋市大医学部の中西研究室の西山さん達の仕事だ。9月8日号のNatureに掲載された。(http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature12488.html)
  DNAのメチル化は、少なくとも私たち哺乳動物では遺伝子の発現を抑制するために欠かせない重要なメカニズムの一つだ。これがうまく行かないと、発生もうまく行かず、また発がん過程にも関わることが知られている。しかし細胞が分裂して新しいDNA 鎖が合成されると、メチル基のついていない核酸で置き換わる。そのため、前と同じ場所を新たのメチル化をできないと、遺伝子の調節パターンを維持することが出来ない。この課程に関わる分子についてはよく理解されている。ただ、なぜ新たなメチル化が、DNA複製と連結して進むのかについての詳しいメカニズムはわかっていなかった。この問題を、生化学的に世界で始めて明らかにしたのがこの仕事だ。結論は極めてシンプル。Uhrf1と呼ばれる分子がDNAに結合しているヒストンH3にユビキチンと呼ばれる印をつける。次に、このヒストンH3上の印にDNAをメチル化するDnmt1と呼ばれる分子が結合する。この組み合わせで、DNAが複製を行っている場所に正確にDnmt1がリクルートされ、新しく合成された側の核酸にメチル基をつける。これがシナリオだ。おそらく一般の方にはなかなかわかりにくい。おそらく問題があまりに専門的すぎるのだろう。しかし、この仕事から発展する将来の可能性も含めて極めて重要な貢献だ。
   このようにこの論文の水準は極めて高い。しかしそれ以上に、私はこの論文を読んで本当に生化学のプロの仕事だと感じた。専門家をなるほどと感心させる仕事(私も専門家の端くれだとして)がここにもいるという嬉しい実感だ。様々な分野のプロがいて、プロをうならせていくことも、科学の発展にとって欠かせない。そのような研究をどう見つけていくのか、政府にとっても重要な課題だ。


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