AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 2月23日:腸内細菌に働きかける母乳のシアル化オリゴ糖(2月25日号Cell掲載論文)

2月23日:腸内細菌に働きかける母乳のシアル化オリゴ糖(2月25日号Cell掲載論文)

2016年2月23日
   時に思い込みが強すぎて危なっかしいとはいえ、よくこんな実験思いつくと思えるようなアイデア豊富な研究を続けているグループがどの分野にもいる。腸内細菌叢と栄養の分野ではワシントン大学のJeffrey Gordonさんではないだろうか。体重差の大きく違う一卵性双生児ペアを全国から見つけ出してきて、その腸内細菌叢をマウスに移植して、腸内細菌叢が肥満につながる重要な要因であることを示した研究(http://aasj.jp/news/watch/2407)を読んだ時には、その着想の斬新さに思わず唸ってしまった。今日紹介するのも同じグループからの論文で母親の母乳成分が子供の腸内細菌叢を刺激して低栄養になるのを防いでいるという研究で2月25日号のCell に掲載された。タイトルは「Sialylated milk oligosaccharides promote microbiota-dependent growth in models of infant undernutrition (シアル化オリゴ糖は低成長児の成長を腸内細菌叢依存的に促進する)」だ。
   この研究ではマラウィ共和国で行われた児童成長コホート研究から母乳栄養で育てているにもかかわらず低栄養により成長が止まった子供の母親のミルクを分析し、低栄養の子供の母親はミルク中のフコシル化やシアル化されたオリゴ糖が低いことに注目して、オリゴ糖が細菌叢に働いて子供の成長を助けているのではと仮説を立て研究を進めている。この実験ではミルク成分による腸内細菌叢の変化を調べることが重要になる。少し強引かとは思うが、今回の研究では低栄養の子供の細菌叢を代表させた25種類の細菌をマウスに移植し、このマウスに牛乳中のシアル化オリゴ糖を投与してその効果を調べている。期待通り、細菌叢を移植するとマウスの成長が止まるが、シアル化オリゴ糖を投与すると成長が戻る。次に細菌叢の何が変化するのか調べると、細菌の種類が変化するのではなく、オリゴ糖が細菌により分解され、それにより細菌叢の代謝が変化、さらにこの変化が子供の代謝全般を活性化して子供の成長が助けられることを突き止めている。同じ現象が無菌ブタでも観察できることも示して論文は終わっている。
   すなわちこの研究では細菌叢を活性化する食事、すなわちプレバイオの可能性を追求している。テレビでは効果が宣伝されていても、小児にビフィズス菌や乳酸菌を投与するプロバイオの大規模治験では、思った効果は得られないようだ。したがって、乳幼児については、腸内細菌叢を育てる方法の開発が重要になるが、いち早くこれに注目して新しい実験系を提案するなど、なかなか面白いグループだと再認識した。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*