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読売新聞記事9月19日 認知症の原因物質、見えた! 海馬に「タウ」

2013年9月19日
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元の記事は以下を参照。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130919-OYT1T00268.htm?from=top

特に最近、日本から重要な仕事が出ているような気がするが、この放医研樋口さん達が雑誌ニューロンに発表した仕事もその一つだ。アルツハイマー病ではアミロイドとタウという分子が異常に蓄積することが知られているが、病気の進行をヒトで調べるためには、それぞれの物質の蓄積を脳内で調べることが必要だ。この重要性から世界中がタウ分子の蓄積を、生きた人間で画像化するための化学物質の開発を競っていた。勿論これまで報告はあったが、今回の樋口さん達の見つけたBPB3と呼ばれる化合物は、これまで報告されてきた物よりははるかにタウ蛋白に特異性を持っているようだ。この仕事では、試験管内やマウスモデルを使って慎重な検討を行った後、ヒトに応用している。そして、早期のアルツハイマー病を含む、タウ蛋白が関与すると考えられる認知症の診断が可能であることを示した。早期のアルツハイマー病だけでなく、タウが関わる病気の脳を今後早い段階から調べることが出来る。しかも、多くの研究者が注目している分子を直接追跡できる。そう考えると今後の可能性は計り知れないと思う。研究についても基礎的な検討にとどまらず、標識の開発に時間のかかる11C標識を使うなど、実用化を考えて労力を惜しまない意気込みが見える。勿論私は専門ではないが、おそらく画像を見たとき樋口さん達は「やった」と叫んだと思う。世界的にも注目を浴びているようだ。掲載雑誌のニューロンでも解説記事が用意されている。これまで紹介したScienceNewsLineの英語版はもちろんだが、BBCニュースでも紹介され、今後報道が相次ぐだろう。我が国にとどまらず、認知症は世界的問題だ。このようなソフトな仕事こそ、これからの成長戦略で支援すべき仕事だろう。
   この仕事については読売が紹介した。実際、アルツハイマー病にとどまらずタウ蛋白の関わる様々な病気に利用できることを考えると、「認知症の原因物質」とアルツハイマーを見出しに出さなかったのは上手な処理だと思った。もちろん記事の内容は膨大なデータの中からほんの一部をとりだして紹介しているため、特に間違いはない。しかし、この仕事の重要性や将来性についてはもう一つぴんと来ない記事になってしまっている。これまで出来なかった課題が実現しそうなこと、この技術から予想される将来の様々な研究など、実際の論文を読んだときに感じる興奮を是非伝えてほしいと思った。また、せっかくPET画像まで出すなら、正常人の画像と対比して出して貰えばもっと興奮が伝わったかもしれない。実際、BBCニュースでは専門家のコメントから、患者団体のコメントまで動員している。紙面の制限はあるにせよ、仕事の質を判断できる能力が記者に問われる仕事だ。(その後朝日新聞と、毎日新聞が同じ研究を報告している。個人的好みだが、朝日の西川さんの記事は、私が正常像との比較をのせるなどよくまとまっている。ただもっと興奮していい研究なのだが?)
  最後に、欧米の場合患者さん団体のコメントを見ることが多いのだが、日本で皆無なのはどうしてなのか。不思議に思った。

 

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