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4月12日:あらゆることを治験で確かめる(4月11日号The New England Journal of Medicine掲載論文)

2016年4月12日
    科学的に説明がつかない場合でも、きちんと計画された治験に基づいて効果が確認されれば、薬効はある。一方、どんなに科学的に妥当性があっても、治験でその効果が確かめられなければ、薬効はないと判断する。さらに、薬効が認められた薬でも、使用する状況が異なると同じ結果が得られるかどうかわからない。したがって、薬効は使用状況に合わせて治験を行い、効果を確かめる必要がある。
  そんなことは百も承知だが、状況を変えて治験を行うことはそう簡単ではない。特に救急現場で無作為化して薬剤の効果を調べるなど、インフォームドコンセントのことを考えると至難の技だ。今日紹介するワシントン大学からの論文はこの難題をやってのけた研究で4月11日号のThe New England Journal of Medicineに掲載された。タイトルは「Amidarone, Lidocaine, or placebo in out-of-hospital cardiac arrest (病院外の心停止に対するアミダロン、リドカインの効果)」だ。
  街中に除細動器が普及している今も、病院外で心停止が起こると、助かる確率は低く、アメリカでは年間30万人の方がこのように亡くなるらしい。心停止に対する最も有効な治療はもちろんこの除細動だが、何回か試みて正常に戻らなかったケースに、まずエピネフリンなどの昇圧剤を投与、その後アミダロン、リドカイン、生食のいずれかが無作為化して入れてあるアンプルを注射、病院到着時の生存率を調べたのがこの研究だ。実際この条件で患者さんを選ぶと、最初約38000人の心停止患者さんから初めて、対象として残るのが4653人になっている。救急隊が電話を受けてからの到着時間に3群で差はないが、平均が5分程度というのはアメリカの救急システムが極めてうまく機能していることをうかがわせる。
  ちなみに、私が習った40年前の医学では、この場合完全にリドカインの静脈注射になる。さて結果だが、統計的にはアミダロン、リドカインの投与にかかわらず、病院到着時の生存率にほとんど差はない。これは、私にとって全く予想外の結果だった。しかし、発作を起こした時誰かがそばにいてすぐに救急に電話があった場合は、アミダロンやリドカイン投与で5%ぐらい救命率が上がるという結果か考えると、発作後治療までの時間が短いほど、薬剤の効果が現れる可能性を示唆している。従って、到着まで5分という時間であっても、蘇生のためには大きな時間ロスになっていることがよくわかる。結局、誰かが発作を見ていて、除細動を含む適切な処置を受けないと、心室細動からの蘇生は難しいことがわかる。   しかし、私なら絶対リドカインだと思っていることまで、無作為化し、インフォームドコンセントを取らなくて良いという手続きまで済ませて治験を行うアメリカの医学には脱帽だ。ただ、もしリドカイン群の生存率が2倍だったら、大きな非難にさらされるかもしれない治験だと思った。

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