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5月8日:ジカウイルスによる神経細胞死誘導機構(7月7日号Cell Stem Cell掲載予定論文)

2016年5月8日
今年の5月にリクエストに応じてジカ熱の流行とその問題について解説して以来、すでに4回にわたって6編の論文に触れてきた。これらの論文から、
1) ジカ熱ウイルス感染により高率に胎児発生異常が誘導されることが疫学的に明らかになった。
2) 多能性幹細胞から誘導した神経細胞や神経細胞のオルガノイドを使って、ジカ熱ウイルスが神経細胞に感染すると細胞死を誘導することが示された。
3) ジカ熱ウイルスはAXL分子を細胞内への侵入のための受容体として使っており、この分子を強く発現するラジアルグリア細胞が感染の標的細胞になっている。
4) ウイルス感染防御に関わるIRF等のメカニズムを外したマウスを感染モデル動物として使える。
5) 人間の胎盤を構成するトロフォブラストの分泌するタイプ IIIインターフェロンは、ウイルスの胎盤通過を防御する。
など、このウイルス感染のメカニズム解明が月単位で急速に進んでいることがわかる。
   やはりヒトES細胞から誘導した脳神経細胞オルガノイド培養を用いた実験系を用いて、ジカ熱ウイルス感染による神経細胞死にTLR3が関わることを示したのが今日紹介するカリフォルニア大学サンディエゴ校からの論文で、ジカ関連の論文を積極的に扱っているCell Stem Cell7月号に掲載予定になっている。タイトルは「Zika virus depletes neural progenitors in human cerebral organoids through activation of the innate immune receptor TLR3(ジカウイルス感染は自然免疫に関わるTLR3分子の活性化を通して、ヒト脳オルガノイド中の神経前駆細胞を除去する)」だ。
  この研究では、まず脳オルガノイド培養での遺伝子発現を詳細に調べた後、ジカウイルス感染によりオルガノイドの成長が抑制された時、この遺伝子発現パターンがどう変化するかを調べている。この結果、ウイルスに対する自然免疫に関わることが知られていたTLR3がオルガノイド培養でも上昇していることを発見する。最後に感染によるオルガノイド発達抑制にTLR3が関与していることを明らかにするため、TLR3阻害剤を加えてウイルス感染実験を行うと、オルガノイドの発達を完全ではないが回復させられることを明らかにしている。    もともとTLR3は線維芽細胞を用いた実験でジカウイルスなどのフラビウイルス感染で活性化されることがわかっており、これが神経でも起こることを示した研究で、特に新味はない。しかし、研究のスピードには驚かされる。また、感染後の詳しいデータが得られたことで、今回見落とされた重要な経路も必ず発見されるだろう。
   リオ・オリンピックでも突貫工事が続いているようだが、オリンピックに影を落としていたジカウイルス問題も突貫研究で対策の糸口が見え始めているようだ。

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