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6月5日:着用型人工腎臓(6月4日号JCI Insight掲載論文)

2016年6月5日
   日本透析医学会によると、我が国の透析患者数は32万人を超えているようだ。この数の患者さんをカバーできるだけの透析施設が存在しているが、地震などの大災害では、施設の損害や、水不足などで施設が使えなくなり、患者さんも他県の透析施設の利用を余儀なくされる。もし施設に頼らず透析が可能なら、患者さんへの恩恵は計り知れない。
   これも結局は無い物ねだりかと思っていたら、6月4日号のJCI Insightになんと身につけたまま血液ろ過が可能な着用型人工腎を開発して臨床治験を行ったUCLAからの論文が掲載されていた。タイトルは「A wearable artificiall kidney for patients with end-stage renal disease (最終段階の腎不全患者さんのための着用型人工腎臓)」だ。
   透析は、血中に蓄積した尿酸を半透膜を介して透析液に移行させることで除去するのが原理だ。このため、透析で尿素を除去するための大量の透析液が必要で、どうしても小型化することは難しかった。
  この問題に対してこの研究では、これまでの透析法の代わりに、まず血液を尿素分解するウレアーゼを含むカラムを通過させて、アンモニアと炭酸ガスに分解する。続いて、発生したアンモニアはジリコニウムのカラムに吸収させ、炭酸ガスは外部に逃すことで血中の尿素を除去している。これに加えて、活性炭素カラムを使って他の老廃物を除去する仕組みを持った機械を開発している。論文に写真が掲載されているが、この透析機は大人のウエスト周りに全て装着できる大きさだ。おそらく透析患者さんが見たら驚かれると思う。
  次に、この機械の安全性と効率を確かめるため、腎不全患者さんをリクルートし、その中から条件にあった7人を選んで、この装着型透析機を24時間装着させてその安全性と効果を調べている。7人の患者さんは安全のために全員入院させて機械を装着させている。
   さて詳細を省いて結論だけを述べると、24時間ではあるが、通常の透析機と比べても、尿素やクレアチニン除去ができており、血中の老廃物の量も一定に保たれたという結果だ。
  24時間ではほとんど副作用は見られなかったが、最終産物である炭酸ガスの排気は完全でないことが改良点として見つかっている。実際この治験中も、患者さんが手動で排気をしなければならなかったことが多々あったようだ。この意味で、さらに長期の治験を行うにはまだ時間がかかりそうだが、原理的に人間に使える着用型人工腎ができたことは確かで、装着型人工腎が一歩一歩実現に近づいていることを示すことができている。そして何よりも、24時間だけだったとはいえ、着用型人工腎を使ってみた患者さんのほとんどが、人工透析より生活の質が向上したと答えている。実現もそう遠くないと思うので、期待したい。

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