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毎日新聞10月1日(須田)記事:出産:早発閉経で初 卵子のもと成熟させ体外受精

2013年10月1日

オリジナルな記事については以下のURLを参照してください。
http://mainichi.jp/select/news/20131001k0000m040116000c.html

最近、独身女性の卵子凍結、卵巣移植など生殖補助医療関係の報道が多い気がする。この背景には、不妊治療について600近い認定施設を擁し、基礎から臨床まで人材の豊富な日本の高いレベルがあると想像できる。今日アメリカアカデミー紀要に発表された、聖マリアンナ医大と、スタンフォード大学の共同研究は、まさに日本の研究レベルの高さを遺憾なく発揮している研究で、未熟な卵胞を活性化させる方法を開発し、早発性閉経の患者さんが出産する事が出来たという研究だ。
  この論文で驚く点は、前半がマウスを用いた基礎的な仕事、次にヒトの卵巣を用いた実験研究、そして最後に早発性閉経の患者さん27人を用いた臨床研究から構成されている点だ。普通は、それぞれ別々の仕事になることが多い。基礎研究では未だ成熟卵胞が存在しない10日令マウスの卵巣を取り出し、未熟卵胞から成熟卵胞を試験管内で成熟させるためのシグナルについて探索が行われた。ここに関わる分子は、急速に研究が進んでいるYap-Hippoシグナルだが、その詳しい内容を紹介する必要はないだろう。この研究の最も重要な発見は、卵巣をはさみで切り刻むことでこのHippoシグナルを抑制し、結果未熟卵胞の成熟が始まると言う発見だ。これに、更に卵胞の成熟を促す分子Akt刺激剤を加えて2日ほど培養し、それを卵管近くに戻すと、ほぼ正常の排卵が始まる。マウスを用いてこの分子の動きをしっかり確認した上で、ヒト卵巣でも同じ方法が使えるか確認し、最後に早発性閉経の治療へと進んでいる。大変な仕事だ。今のところ出産に至ったのは、1例だけだが、論文にはもう一人の方でも妊娠が確認されたと書いてあるので、今後期待が持てる。画期的な方法の開発と言っていい。
   実際各紙が一斉に報道している。その中で毎日新聞の須田さんの記事は正確で、わかりやすい。ただ、卵巣をハサミでばらばらにすると言う一見野蛮な処理が、この技術の鍵になっていることを是非伝えてほしかった。須田さんは「目覚めを促す物質を加えた培養」と書いているが、本当はそれだけでは足りない。読売、朝日では卵巣を小片にする事は書いてあるが、やはりこれが新しい技術である点には注目していない。ここで野蛮と言ってしまったが、Yapシグナルから考えると、すばらしい思いつきだ。素朴であってもしっかり科学がある。今後の期待は大きい。


  1. 東美貴子 より:

    プレス内容とはやや遠いですが、日本の教育問題として、毎日新聞の「女性の卵巣には、思春期に約50万個の原始卵胞があり、毎月成熟した1個が排卵される。閉経時は数千個に減る。早発閉経は、卵巣機能の低下によって40歳未満で排卵が止まり、月経がなくなる病気で、女性の約1%が発症し、国内の患者数は推計10万人に上る。」の情報は、最近散見しつつも、とてもエッセンシャルで重要な情報だと思いました。アベノミクスや時代の変遷で高齢出産が身近となった今、卵子老化の話題は切り離せない情報です。思い返せば出産適齢期というのは伝承的で、大々的に教えてもらえていないのが日本の現状。生命の原点の情報は、実は当たり前でない気がしました。

    1. nishikawa より:

      読んでいただいて有り難うございます。私もこの記事には、須田記者の女性としての感性を感じました。

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