AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 6月15日:発作性心房細動に対するアブレーション治療は冷凍凝固法か高周波電流法か?(6月9日号The New England Journal of Medicine掲載論文)

6月15日:発作性心房細動に対するアブレーション治療は冷凍凝固法か高周波電流法か?(6月9日号The New England Journal of Medicine掲載論文)

2016年6月15日
    今日は発作性心房細動でアブレーション療法を勧められた知り合いと話していた時、私が思い出して詳しく読んでおくと約束した、ヨーロッパからの治験論文を紹介することにした。
  発作性心房細動は本来心臓を刺激する洞結節以外の場所、特に左心房に直結する肺静脈の細胞が電気刺激を始めることにより誘発される。この刺激だけでは心房の拍動が上昇するだけだが、刺激伝達系も老化により変化すると、刺激がぐるぐる旋回して細動が起こってしまう。
    これを根本的に治療するため開発されたのがアブレーションで、刺激発生部位を焼ききったり、あるいは肺静脈と心房の境をリング状に焼ききって刺激伝達を切り離したりする方法が用いられる。現在この切り離しに、高周波で焼き切る方法と、逆に凍結により死滅させる方法の2種類あるが、この研究はどちらの方法が安全で効果が高いのか比べた多施設共同治験で、まさに知り合いから相談された内容に近い。
   タイトルは「Cryoballoon or radiofrequency ablation for paroxysmal atrial fibrillation (発作性心房細動のアブレーションには凍結バルーンか高周波かどちらがいいのか?)」で、The New England Journal of Medicine 6月9日号に掲載された。
   この治験はドイツ、英国、スペイン、イタリア4カ国の病院で、2012年から2015年までにアブレーション治療が必要になった762例の患者さんを、冷凍バルーン法と、高周波法に無作為に割り振り、入院時点で許可されていた最も進んだアブレーション機器を用いて治療、90日を経過してから再発があるかどうか1年間経過観察を行い治療効果を評価している。
   同じような研究はこれまでも繰り返されており、概ね同等か、あるいは凍結バルーン法が安全で効果が高いという結果が出ていたようだ。しかし一方、横隔膜神経を傷つける副作用も指摘されている。この結果だと、患者さんもどちらがいいか判断しづらいだろう。
   今回の研究から、1)多施設で行われていても、両者で治療効果に差がないこと、2)どちらの方法も、新しい世代のカテーテルはより治療効果が高まっていることが明らかになり、結局どちらでもいいという結果だ。副作用でいうと、カテーテルを挿入する部位の出血などの頻度は凍結バルーン法が2倍異常高く、他の副作用も、有意差はないが少しバルーン法が高めと言える。一方、手術時間や心房にカテーテルが止まる時間は10−20分高周波法が長い。知り合いが気にしていた放射線照射時間は逆に5分ほどバルーン法が長いという結果だ。
  私も素人であることを断った上で、自分の身になればどちらを選ぶかといえば、まずその施設で最も経験の多い方法を選び、できれば最も新しい世代のカテーテルを使ってもらうだろう。一方、照射時間などは私の年齢になるとほとんど考える意味はないだろう。いずれにせよ、この治療法を開発した人には脱帽だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*