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6月25日:補体が細胞内で働いている(6月17日号Science掲載論文)

2016年6月25日
    自然免疫は我が国の得意分野だが、様々なTLR刺激がNFkBを活性化してサイトカインを誘導して炎症を起こすという簡単なスキームが、最近複雑になってきている。これは自然免疫刺激によりNLRP3と呼ばれる分子が活性化され、インフラマゾームと呼ばれる分子複合体を形成し、caspase1を介して炎症に関わるサイトカインを活性化させる経路が知られる様になったからだ。特に、NLRP3変異による病気が発見されたのもインフラマゾーム概念形成に大きく貢献した。
   今日紹介する英国King’s Collegeからの論文は、インフラマゾームカスケードがさらに複雑な制御を受ける可能性を示した論文で6月17日号のScienceに掲載された。タイトルは「T helper 1 immunity requires complement-driven NLRP3 inflammasome activity in CD4+ T cells (1型ヘルパーT細胞免疫はCD4陽性T細胞内で補体により活性化されるNLRP3インフラマゾームの活性を必要とする)」だ。
このグループはT細胞の活性化に関わる補体の役割を研究している様だ。T細胞と補体との関係ではC3に結合して補体カスケードの活性化を抑えるとともに、T細胞内のシグナルに関わるCD46がよく知られているが、この研究ではなんと、細胞内のC5がヘルパー機能にどう関わっているかを研究している。
  最近補体がシナプスの剪定に関わるなど、思いもかけない機能が明らかになっているが、細胞内で働いているという話は初耳だ。
   この論文のハイライトは、
1) 1型ヘルパーT細胞のCD3とCD46を同時に刺激すると、細胞内でC5が産生されること
2) ヘルパーT細胞ではC5受容体のC5aR2は細胞膜、C5aR1は細胞内で発現すること、
3) C5aR1とC5の結合はミトコンドリアROSを介してLRP3分子複合体形成を活性化して、インフラマゾーム形成を促進すること
を発見したことだ。残りのデータは、この発見の意味を問うため、阻害剤やノックアウトマウスを使った詳細な炎症反応の解析で、C5の研究とインフラマゾームの研究が入り組んでしまってメッセージがわかりにくい。
   このシナリオはいいが、少し気になるのが細胞外のC5aR2の役割で、論文ではたしかにC5aR1とC5を奪い合って、C5aR1機能を阻害するとともに、直接インフラマゾームの活性化を抑制することが示されている。とすると、C5の刺激が複雑な回路を形成してしまうことになる。実験的に言えば、最終結果が何であってもC5誘導で説明ができてしまうのはスフェアではない様に思える。       とはいえ、C5が細胞内で働いているということ、インフラマゾームの活性化が、自然免疫だけでなくT細胞の抗原刺激でも起こることを示したことは、LRP3遺伝子変異による疾患の深い理解に貢献するだろう。

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