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7月3日:バターは体に毒か?(6月28日PlosOne,6月29日British Medical Journal 掲載論文)

2016年7月3日
   ドイツで暮らしたときの忘れられない思い出の一つは、ジャムを塗ってもよし、ハムを乗せてもよし、朝は何は無くとも、たっぷりバターを塗ったブロッチェンをコーヒーと食べることだ。今でも、ドイツに旅行する時は、この朝食を期待している。しかし、バターは飽和脂肪酸を多く含む食物として、動脈硬化に悪い食べ物の代表としてやり玉に挙げられてきた。ところが、2015年ぐらいから潮目が変わって、少なくとも我々のような高齢者のコレステロールを何が何でも下げていいのかについてはエビデンスがないとする論文が多く見られるようになった。今日はそのような論文を集めて解析した(メタアナリシス)を2法紹介する。
  最初は米国タフツ大学からの論文で、バターの摂取量と心臓病、糖尿病との関連についての9編の論文をまとめ直した研究で6月28日PlosOneに掲載された。タイトルは「Is butter back? A systematic review and meta analysis of butter consumption and risk of cardiovascular disease, diabetes and total mortality (バターは本当に原因か?バター消費と心血管病、糖尿病、全般的死亡率との関連についての系統的再検討)」だ。
  研究ではバター摂取について調べたコホート研究論文9編を選び、これらの論文で対象になった約65万人の死亡率、心臓血管障害発症率、糖尿病発症率とバターの摂取量の関連についてのデータを再検討している。結果だが、相対危険度で死亡率全般については、1日バター消費量14グラムに対して1%相対危険率の増加が見られるが、心臓病の発症率とはほとんど相関がなく、糖尿病に至っては4%の低下が見られたという結果だ。
   今回再検討された論文の中には血中の脂肪酸とバター消費についての相関を調べたけ論文があり、それによるとバター摂取と血中のペンタデカノイック酸、及び奇数鎖脂肪酸との相関があり、これは心臓病の発症を低下させると結論されている。
   要するにバターの楽しみは諦めることはないという話だが、コレステロールやLDL-コレステロールが飽和脂肪酸摂取で上昇することは確かで、これまでの常識に逆らう結果ではないのか?と思っていたら、次の日発行のThe British Journal of MedicineにLDL-Cと心臓病との関係を再検討したスウェーデンからのメタアナリシスが報告されていた。タイトルは「Lack of an association or an inverse association between low-density-lipoprotein cholesterol and mortality in elderly: a systematic review (高齢者ではLDL-Cと死亡率は相関しないか、逆相関が見られる:系統的再検討)」だ。
   この研究では19編のLDL-Cと死亡率との相関を調べたコホート研究データが集められ、もう一度再検討されている。対象は、60歳以上の男女が約7万人だ。結果は単純で、60歳以上についてはLDL-Cと死亡率には全く相関がないか、論文によってはLDL-Cが高い方が長生きするというデータまで出ているようだ。この研究には日本の論文も対象になっており、また高齢者にとってコレステロールを維持する方が重要であるという結果を最初に報告したのは日本のグループだ。
   以上、単純にコレステロール、そしてその原因になる食物を目の敵にしていいのかについては、さらに研究が必要だと思う。実際、コレステロールを下げるスタチンの長期効果は幾つかのコホート研究で示されており、今日紹介した話と真っ向から対立する。両方正しいとすれば、スタチンがコレステロールを下げる以外のメカニズムで心臓病を防いでいることになる。
   いずれにせよ、最終的結論を得るには、さらに長期の国際共同研究が必要だ。ただ、バターについての論文は個人的に正しいとして認めることにした。

  1. 橋爪良信 より:

    私もエシレバターの摂取をやめません。

    1. nishikawa より:

      パン、バター、ワインだけで生きれると思っています。

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