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8月20日:shhによる刺激分子メカニズムの解明(8月25日Cellオンライン版掲載論文)

2016年8月20日
発生や癌に興味のある研究者なら、sonic hedge hog(Shh)を知らないものはいないだろう。最初ショウジョウバエの一つの突然変異として分離され、その後ほとんどの動物発生に必須の分子として研究されてきた。シグナルとしては古参中の古参と言えるだろう。
   ただ、同じように古参シグナル分子Wnt,TKRやBMPと比べた時、そのシグナル伝達の仕組みの複雑さにいつも驚かされてきた。まず最終的にシグナルを伝える分子はSmoothened(Smo)だが、これにShhが結合するわけではない。SmoはPatched (Pth)と呼ばれる分子と膜上で結合しており、これによりSmoの活性が抑えられている。ShhはこのPtchと結合するが、この結合によりPtchがSmoから離れて、Smoに対する抑制が外れシグナルが入る。
   教科書としてはこれで一件落着だが、本当はSmoを活性化しているリガンドが何かという問題が残っていた。コレステロール合成系の異常でShhシグナルが入らないという研究結果からステロールがリガンドとして働いていると考えられているが、それが何かを実際に特定するには至っていなかった。
   今日紹介するハーバード大学からの論文はこのリガンドがコレステロールであることを特定した研究で8月25日号Cellオンライン版に掲載された。タイトルは「Cellular cholesterol directly activate smoothened in hedgehog signaling(細胞内のコレステロールはヘッジホッグシグナル伝達系のsmoothenedを直接活性化する)」だ。
   おそらくこのグループは構造生化学のプロだろう。これまでSmoに結合して活性化することが知られているオキシコレステロール、及び合成リガンドシクロパミンを結合させたSmoとリガンドが結合していないSmoの分子構造をX線回折を用いて行い、またこの結果をもとに、Smoのリガンド結合ブイの変異を誘導して同じように構造解析を行い、Smoが活性化されるための構造基盤を明らかにしている。
   このステロール結合部位の解析から、最も豊富に存在するコレステロールが構造的にSmoリガンドになりうることを着想、最後に構造や分子刺激実験からこれを確認し、Smoはコレステロールにより活性化される分子であることを証明している。    以上の結果から、PtchはSmoと結合することで、Smoとコレステロールの結合を阻害しているが、Shhと結合するとSmoから離れ、すぐにコレステロールがSmoに結合してシグナルが入るというシナリオを提出している。
   豊富に、当たり前に存在するコレステロールがリガンドとして働くというこの発見は、どうしてコレステロールの結合が阻害されるのかなど、多くの問題を残した。これを解いていく中で、Shhシグナルの進化や、あるいは発がんとPtchの関係がより深く理解できるだろう。私にとっては、分子進化のいろんなイメージが湧いてきて、示唆に富む論文だった。

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