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8月25日:鰭条から指へ(8月17日号Nature掲載論文)

2016年8月25日
    胸ビレから四肢の進化は、脊椎動物の進化研究の中でも最も進んだ分野と言える。魚類の進化の過程で骨格が大きく変化することを化石や現存の魚で見ることができるし、何よりも使われている分子の共通性が高く、実験的に進化を研究できるという面白さがある。
   今日紹介するシカゴ大学からの論文は四肢の指の進化に注目した実験進化の研究で8月17日号のNatureに掲載された。タイトルは「Digits and fin rays share comm.on developmental stories (指と鰭条は共通の発生の物語を持っている)」だ。
   この研究は、四肢の指の形成と鰭条形成の共通性についてゼブラフィッシュを用いて調べている。マウスを用いた研究で、指の発生にはHox遺伝子群の後ろの方の遺伝子Hox13が鍵を握っていることがわかっているが、鰭条の発生にHox13が関わるのかは明らかでなかった。
   まずHoxa13の発現が鰭条発生の場所に一致して発現することを示した後、実際にHox13を発現した細胞が鰭条細胞になるのか、遺伝的な細胞系譜研究手法を用いて検討し、哺乳動物と同じようにHoxa13細胞が前腕骨と共に、ヒレの末梢へと移動して鰭条を形成する骨芽細胞へと分化することを証明している。
   ゼブラフィッシュというと、突然変異を誘発して変異を選び、その変異の原因になる遺伝子を特定する前向きの遺伝学に適していることで選ばれてきたが、この研究で行われた細胞系譜実験を見ると、これまでの遺伝学的蓄積の上にあらゆる遺伝子操作技術を使えるモデル動物に発展しているのがよくわかる。    この実験ではさらに進んで、Hoxa13をノックアウトする実験をCRISPR/CASシステムを用いて行っている。一般にはCRISPRを用いれば何でも簡単と思われているが、実際に実験に用いるとなると大変な努力がいったと思う。いずれにせよ、Hoxa13aとHoxa13b、及びHoxd13ノックアウトフィッシュを作成して、これらの分子が鰭条形成に関わっているかどうか調べている。
結果はHoxa13a+Hoxa13b両方の遺伝子をノックアウトした魚を作ると見事に鰭条が欠損し、その代わりに鰭条の発生する根元の細胞が増加することがわかった。
   以上の結果から、ヒレ形成後期で発現するHoxは間質細胞が移動し鰭条へとまとまっていく過程を指令する分子だと結論している。このHox遺伝子発現と機能の共通性をとっかかりに、指の骨と鰭条形成を比べることで、指の進化のシナリオも明らかになるだろう。もちろんマウスの指の発生はさらに詳しく調べられており、Hoxd10の役割と染色体の高次構造についての素晴らしい研究がある(http://aasj.jp/news/watch/3533及びhttp://www.brh.co.jp/communication/shinka/2015/post_000013.html)。このような多くの結果を総合することで、なぜ私たちは別々の形をした5本の指を持つのか子供達にわかりやすく語れる日が来るだろう。期待しよう。

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