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9月16日:アトピーになりやすい腸内環境(Nature Medicineオンライン版掲載論文)

2016年9月16日
    アトピーを定義することは難しい。アメリカ喘息アレルギー学会は、普通に環境に存在する様々な抗原に対して免疫反応を起こしやすい体質と定義しており、この体質を明確に遺伝的体質であると明言している。最近の研究で、この体質の一端が、外界の抗原の進入を防ぐ皮膚のバリア機能の低下であることがわかってきた。この問題の一つの解決法として、保湿剤などを新生児に塗布してバリア機能を補完する試みが国立生育医療研究センターで行われ、高い効果があることが示されている。
  一方、体質以外のアトピーに繋がる要因として注目されているのが腸内細菌叢だ。昨年、生後3ヶ月の乳児の便を調べて、喘息のリスクと細菌叢の構成が相関することが示され、特に注目が集まっている。例えば今年8月このホームページで紹介した、不潔と思われる新生児の指しゃぶりにアトピー予防効果があるというニュージーランドからの研究も、最終的には腸内細菌叢の変化によりアトピーを予防しているのかもしれない(http://aasj.jp/news/watch/5506)。
   今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文はこの問題をさらに掘り下げるため、生後1ヶ月という早い段階の腸内細菌叢とアトピーの相関を調べた研究でNature Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「Neonatal gut microbiota associates with childhood multisensitized atopy and T cell differentiation (新生児の腸内細菌叢は児童の多数の抗原に反応するアトピーとT細胞分化と相関する)」だ。
   研究では生後1−11ヶ月までの乳児298名から便を採取、腸内細菌叢及び真菌の構成を調べている。生後1ヶ月前後で多くのサンプルを集めている点と真菌についても調査が行われている点が今回の研究の重要な点の一つだ。
   実際には何百種類にも及ぶ細菌叢の構成を多くの人間で比べるため、様々な数理解析を重ねる分析が必要だ。例えば、腸内細菌叢の多様性と、真菌の多様性が逆相関することを示すグラフがあるが、実際には大きくばらついている。個体間の多様性についてみると、細菌叢は年齢とともに拡大するが、真菌は逆に収束する。これらの数理解析から、新生児の細菌叢をなんとか3群に分けている。各群で、2歳児時点で様々な抗原に対するIgE反応、あるいは両親からの聞き取り調査による喘息の有病率を比べると、一つの群がアトピーと相関することが認められ、このアトピーリスクと相関する群の特徴をさらに解析している。
   この群の特徴は、細菌叢の多様性が低いこと。特にビフィズス菌、乳酸菌、大便菌,真性細菌の比率が減り、真菌についてはマラセチア菌が減っている特徴を有している。その結果、胆汁由来の代謝物が上昇する一方、アミノ酸や脂肪など多くの代謝物の構成が正常群とは異なることが明らかになっている。
  最後に、便から水で抽出できる成分と末梢リンパ球を混合する実験から、アトピーリスクと相関する細菌叢から炎症性のT細胞がより強く誘導されることが明らかになっている。
   この結果は、期待通り新生児の腸内細菌叢の構成は将来のアトピーリスクと相関すること、そしてこれを標的にした治療が可能であることを示唆している。プレバイオかプロバイオか、小児科領域で重要な分野になると思う。

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