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10月10日発行Nature論文:鳥インフルエンザの起源(オリジナル)

2013年10月11日

  3月、H7N9型鳥インフルエンザのヒトへの感染が発見されて以来、このビールスは中国、日本を始め多くの国で徹底的な研究が行われている。130人の感染者のうち40人が死亡した事を考えると当然の事だ。この報道ウォッチでも以前日本の河岡グループの研究を取り上げた。病気が発生してから半年以内にいくつもの論文がトップジャーナルに掲載されるのは、世界が注目している事と、各国で研究体制の整備が進んでいる現れだろう。
   今日紹介するのは、広東省汕頭大学にあるインフルエンザ研究センターからの仕事で、人に感染したH7N9ビールスがどのように進化して来たのかを調べた研究だ。このために、グループは1300を超す鶏、鴨、ガチョウ、ハト、ヤマウズラ、ウズラからサンプルを集めると同時に、生きた鳥を扱うマーケットからも糞や水サンプルを集め、インフルエンザビールスの遺伝子を調べている。幸い、H7型のビールスは実際に病気が発症した温州市と日照市の、鳥市場でしか見つからなかったと言う事で、今の所、地方病でとどまり少し安心できる。勿論安心ばかりもしておられない。どっこいこのビールスは鶏や鴨の中で生きており、除去された訳ではない。幸い、この仕事によりビールスが発生する経路はかなりはっきりして来た。すなわち、H7型のビールスは、主に野生の水鳥の中で維持されている3種類の異なるビールスが混じり合って新しく生まれたビールスで、食用に飼育されている鴨やガチョウにH7N7,H7N9型の2種類のビールスとして保持されている。次に、2種類のH9N2型ビールスを持っている鶏にこのビールスが感染し、混じり合う事で今回ヒトに感染したH7N9ビールスが生まれ、鶏内で維持される。最後に、その鶏内でヒトへの感染性を獲得した変種が人間に感染したと言う一連の過程だ。今回の仕事で、まだヒトには感染していないH7N7という兄弟ビールスが存在する事、及びヒト感染性を獲得する過程に、水鳥のビールスが鶏に感染する最終ステップの重要性が明らかになった。ここからわかるのは、水鳥を扱うマーケットと鶏内のビールスを定期的に検査していけば、新しいビールスについての予測も可能になる事を示している。是非、中国の行政でもこの仕事を真剣に受け止めた対応を進めて欲しいと思った。
   最近時間、Ezra VogelのDeng Xiaoping (鄧小平)を読んでいる。その中で印象に残ったのは、彼が失脚から回復を果たす度に、中国の科学研究の近代化を推進する部署で仕事をしたいと望んだ点だ。そして、その結果が今実を結びつつある事を感じさせる研究だった。


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