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12月6日:パーキンソン病を促進する腸内細菌叢(12月1日号Cell掲載論文)

2016年12月6日
    腸内細菌叢がもう一人の自己として、私たちの健康に重要な働きをしていることはよくわかっているつもりだが、自閉症や躁鬱病などの脳機能にまで影響するという論文が出てくると、受けを狙いすぎているのではとあまりのフィーバーぶりが心配になってくる。事実今日紹介するカリフォルニア工科大学からの論文のタイトルを見たときも同じ印象を受けた。タイトルは「Gut microbiota regulate motor deficit and neuroinflammation in a model of Parkinson’s disease(腸内細菌叢はパーキンソン病モデルでの運動障害と神経炎症を調節する)」で、12月1日号のCellに掲載されている。
   腸内細菌叢研究がブームになる要因は、細菌が全く存在しない無菌マウスを利用できるようになったことで、様々な病気モデルマウスを無菌状態と、菌が存在する状態で飼育して起こってくる変化が見つかれば、話が成立する。この研究では神経細胞にαシヌクレン遺伝子を過剰発現させたパーキンソン病モデルマウスを無菌と有菌状態で飼育、両者を比較することから始めている。期待通り、3種類の運動機能を調べると、細菌叢が存在するマウスでは機能低下が著しく、また大脳でのシヌクレンの蓄積が更新し、同時に大便の量が低下することを発見している。すなわち、細菌叢の作用によりシヌクレン蓄積が促進し、また腸の機能も低下するという結果だ。
   あとはメカニズムを調べればいい。まず、無菌状態と比べて細菌叢があると最も影響を受けるのがミクログリア細胞で、無菌状態では炎症活性が低下し大きさが小さくなっている。すなわち、細菌叢が作用するミクログリアを介する炎症がシヌクレン蓄積を促進するというシナリオだ。この最終原因として、最終的に細菌叢が分泌する単鎖脂肪酸がミクログリアの活性化と運動機能不全に関わることを示している。
   最後に、実際のパーキンソン病患者さんの細菌叢が正常人と比べて偏りがあること、パーキンソン病患者さんの便を無菌マウスに移植して運動機能を調べると、機能低下が激しいことを示している。
   結論的には、パーキンソン病自体が腸内細菌叢を変化させ、この変化がより運動機能低下に関わるという結果になる。抗生物質で、菌をすべて叩けばシヌクレンの蓄積は抑えられるが、長いスパンで考えると現実的な治療ではない。残念ながら単一の細菌を移植したノトビオティックな実験系を使っていないので、どの細菌が原因となる単鎖脂肪酸を分泌するのか特定できていない。かなりフラストレーションの残る論文だ。私がレフリーなら、菌の特定までやって始めてアクセプトする。他にも、このモデルはαシヌクレンをThy1分子のプロモーターで発現させているが、リンパ球には発現していないのか気になる。もし発現しておれば、炎症や腸管の障害については他のシナリオも考えられる。おそらく、普通はCellに掲載されることはない論文に思える。「事実は小説より奇なり」と意外性だけを狙ったらこんな論文になると思う。
   とはいえ、もしこの話が本当なら、パーキンソン病の進行を遅らせる可能性はある。ノトビオティックマウスを用いた地道な研究を望みたい。

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