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12月11日:パーキンソン病治療のための経路(11月30日号及び12月7日号Science Translational Medicine掲載論文)

2016年12月11日
   私たちAASJはパーキンソン病の患者さんとの付き合いが深いが、運動障害のために患者さんが毎日大変な思いで生活しているのを目の当たりにする。私たちにできることは知れているが、理事の藤本さんや麻生さんも、なんとか助けたいという強い気持ちに駆られているのが、はためからもみてもよくわかる。そして患者さんも、私たちも、全員が病状を遅らせるだけでもいいから多くの治療法が開発されることを強く願っている。
   幸い、この病気の研究者は多い。おかげで、なんとか入り口にある治療法が続々開発されている印象がある。CiRAの高橋さんの細胞治療もそうだが、遺伝子治療、薬剤治療と、可能性を示す論文は数多い。
   今日紹介する2編の論文は、病気の進行を遅らせる治療法につながる標的分子の研究で11月30日号と、12月7日号のScience Translational Medicineに掲載された。古い順に、「Nigral dopaminergic PAK4 prevents neurodegeneration in rat models of Parkinson’s disease (ラットのパーキンソン病モデルで黒質のドーパミン神経のPAK4は神経変性を阻止する)」と「Mitochondrial pyruvate carrier regulates autophagy, inflammation, and neurodegeneration in experimental models of Parkinson’s disease(ミトコンドリアのピルビン酸キャリアはパーキンソン病の実験モデルでオートファジー、炎症、神経変性を調節する)」だ。
   今日は2編紹介するため、長くなると読みにくいと思うので、できるだけ短く紹介する。
   最初の論文は韓国・忠北大学医学部からの論文で、PAK4と呼ばれる分子が、1)ドーパミン神経で発現し、患者さんでは低下していること、2)強制発現させるとラットのパーキンソン病モデルで神経死を抑えることができること、3)この分子はCRTC1分子のリン酸化を介してCREB転写因子を発現させ細胞死を防止すること、などを明らかにしている。その上で、レンチウィルスベクターを用いた遺伝子治療でPAK4を発現させれば病気の進行を遅らせられると提案している。遺伝子治療であるという点、そして発がんの危険性などをクリアできれば治療標的としては可能性があると思う。
   この論文よりさらに可能性が高く、実際治験も進んでいるのが次の論文で、ミトコンドリア内へピルビン酸を運ぶキャリアを阻害する化合物MSDC-0160が様々なパーキンソン病モデルで神経死を防ぐという研究だ。
   この論文を読んで初めて知ったが、これまでPPARγ阻害剤として糖尿病治療に使われてきたthiazolidinedione(TZD)は、ピルビン酸キャリア(MPC)の阻害作用があり、これによってβ細胞の保護作用を発揮していることが最近明らかになっていたことだ。そして、TZDはこれまでの経験でパーキンソン病の進行を防止する効果があることが知られていたことだ。
   この研究ではMPC阻害剤として開発されたMSDC-0160を、人細胞株、線虫、マウスモデルなどで検討し、αシヌクレン蓄積によるパーキンソン病での細胞死を防ぐことができることを見つけている。研究ではメカニズムについて詳しく調べているが、ピルビン酸のミトコンドリアへの移動が抑えられることによる代謝障害がmTOR経路を介して、オートファジーを正常化、炎症を収め、ミクログリアの活性を下げることで、全体として神経が保護されると結論している。
   重要なのは、この薬がすでに糖尿病に12週間投与され、効果や副作用のデータが存在すること、またアルツハイマー病の治験が進んでいる点だ。おそらく、パーキンソン病にも治験を始めるのもそう難しくないだろう。是非期待したい。

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