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1月21日:心臓機能補助・ソフトロボット(1月18日:Science Translational Medicine掲載論文)

2017年1月21日
    2000年に入ってから、小型の埋め込み型補助人工心臓の開発が加速し、最終的に心臓移植以外の治療法がない患者さんでも、自宅で長期間生きることが可能になり、装着数は飛躍的に増加していると思う。しかし、いくら埋め込みと言ってもこの方法では循環システム外に血液を流す必要があり、凝固を防ぐためワーファリンなどの抗凝固剤の投与が必要で、常に出血の危険と隣り合わせになる。
   この問題を解決すべく、心臓を空気で膨れたり縮んだりするパイプが埋め込まれたシリコンで包み込んで、心臓の動きに合わせて空気を出し入れすることで、心臓の収縮・拡張を助ける方法の補助心臓の開発が続けられていた。この方法の最大の利点は、血液を本来の循環システム外に導入する必要がないことから、抗凝固剤を必要としない点だ。
   今日紹介するハーバード大学からの論文は、この方法が臨床応用までもう一歩のところに来たことを示す研究で、1月18日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Soft robotic sleeve supports heart function(柔らかいロボット化したカバーを使って心臓の機能を助ける)」だ。
   このソフト補助心臓カバーには心筋の走行性に合わせ、斜めのパイプと、水平に丸く取り巻くパイプが任意の数設置できる。収縮拡張には空気を用いるが、それぞれのパイプを別々に時間コントロールすることで、通常の心室が収縮するのに近い動きを再現している。また、それぞれの収縮拡張のタイミングを、本来の心臓の動きと完全に連動できる。
  こうして作成した補助心臓を、まずは安楽死させた豚の心臓に装着し、血液の拍出量等を実測した後、急性心停止を起こさせた豚に15分装着して、急性に不全に陥った機能を回復できるか調べ、90%近い回復が可能であることを示している。最後により実践的な心停止モデルでも装着して、エコー検査で機能回復を確認している。また、長期間心臓に装着しても、炎症が起こらないことも確認している。
   この研究では急性の心不全に、しかも短期に装着する実験だけが行われ、現在用いられている補助人工心臓の様に何年もこれが機能するかどうかめどがたつためには、何年もの年月がかかるだろう。しかし、様々な原因の急性心不全で心臓が回復するまで補助するためには、比較的早い段階で臨床に使われる可能性があると思う。さらに、このカバーに持続的注入器を装備して、心筋細胞や薬剤を注入しながら回復を待つことも可能だと提案している。人型ロボットには大きな関心が集まっているが、この様な見えないロボットも着実に進歩していることがよくわかった。

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