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1月24日:CTC(末梢血中がん細胞)を早期診断に使えるか?(米国アカデミー紀要掲載論文)

2017年1月24日
     末梢血中に流れ出てきたガン細胞を、診断や治療効果の検証に使おうとする研究が進み、すでに臨床現場でも使われていると思う。例えば以前ここでも紹介したように、乳がんの場合、ガンの初期であるステージ1でも、30ccの血中に1−数個のガン細胞を発見することが可能だ。生きたがん細胞が簡単に手に入るという意味は臨床には大きい。特に病気の経過と、得られたガン細胞の治療に対する反応などを調べることができる。細胞数にもよるが、ゲノムや遺伝子発現の変化についても調べることができる。しかし早期診断となると、この方法の最終診断にはあくまでガンマーカーを用いた細胞診が必要で、血中に流れるDNAを調べるリキッドバイオプシーなどに劣ると考えられてきた。しかし、リキッドバイオプシーにしても、最近期待されているエクソゾームを用いる方法にしても、がん細胞を直接扱っていないという問題が付いて回る。
   今日紹介するハーバード大学からの論文はガンの早期発見という目的に絞ってCTCの可能性を探った論文で、米国アカデミー紀要オンライン版に掲載された。タイトルは「An RNA based signature enables high specificity detection of circulating tumor cells in hepatocellular carcinoma(特徴的RNA発現を組み合わせると肝臓癌でのCTCを特異的に検出することが可能)」だ。
   この研究では肝臓癌の早期発見に絞っている。我が国では早期発見というとすぐに健康診断への利用と結びつけるが、様々なガンではリスクが高い集団が存在し、ガンの発生がモニターできると大きな恩恵をこうむる人たちがいる。なかでも、慢性肝炎や肝硬変の患者さんは肝臓ガンのハイリスクグループで、確実な方法でガンの発生をモニターする意味は大きい。
  研究では、ここでも紹介した(http://aasj.jp/news/watch/2114)物理学的性質を用いて血中のガン細胞を集める機器CTC-iChip(http://www.nature.com/nprot/journal/v9/n3/fig_tab/nprot.2014.044_F1.html)を、PCRで肝ガン特異的遺伝子発現検出と組み合わせることで、肝ガンの検出率をあげることができるか調べている。まず、CTC-iChipで生成したガン細胞のRNA発現を調べ、肝ガンに特異的に上昇している遺伝子10種類を選び出し、細胞診の代わりに遺伝子発現を指標にした検査を開発している。
   この方法のミソは、RNAの発現を調べるために液滴の中で個々のRNAを増幅して発現を調べるデジタルPCRを用いている点で、これにより増幅のバイアスを減らして、量的な比較が可能になるとともに、検査全体を一つのフローとして自動化することも可能になる。
   次にこうして確立した検査法を持ちいて、肝ガンと診断されたばかりの患者さんの血液を調べ、調べた全ての患者さんで特異的に肝臓ガンを検出が可能で、治療効果もモニターできることを示している。
   最後に肝炎の患者さんについて早期発見に使えるかモデル実験で可能性を確かめた上で、ガンと診断された15人の患者さんについて、現在最も使われているαフェトプロテイント比較しながら調べている。まず、5例はどちらの検査でも陰性。AFPとCTC両方で陽性が5例、CTCのみで検出できるのが4例、AFPのみが1例という結果だ。診断率から見ると、この検査も完全ではない。ただ、肝臓移植などで治療可能な患者さんに限ると、1/3でCTC検査陽性だったが、AFP検査では診断できていない。従って、現時点で手術治療可能かどうかを診断するためにはCTCは利用価値が高いという結論で終わっている。
   早期発見のための検査としてはまだまだと言わざるをえないが、かなり仕上がってきてはいる。また、細胞から始める点で高い特異性がある。個人的には他の方法より、期待できるのではと感じている。

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